遅らばせながら序文をば進呈仕る。御ゆるりと御覧あれ。

 イエス=キリストの生誕から一八〇〇有余年。

 わたくしBはある人物について書き残すことにしました。そう思い立ったのも、我が人生が老境に差し掛かったからでしょうか?

 私はろくに教育も受けていません。故に人の生き様について書き連ねるなど、不適格なのは重々承知しているのですが、敢えてその身に甘んじることを決意しました。

 というのも、それ程までに、この老齢の身に沸々とたぎるものが存在するからです。

 現在、新秩序を打ち立てようとする者共により、欧州全土が戦乱に取り巻かれ、世間はただもう右往左往しているばかりです。何が正しくて、何が間違っているのか? 私の空っぽな頭では確かな答えを出す事など容易ではありません。

 ですが、それでも、私が今以てして心の中から敬愛する彼の事を、皆さんの御記憶の片隅に押し留めてもらえる事が出来るという行為は、十分に意義の有る事だと自信を持って言えるのです。

 私は妖術師を幾人も知っていますし、実際に彼らが魔法を使うのをこの目で何度も見てきましたが、彼ほど慈悲深く、人の役に立った妖術師は他には居ません。というのも、大半の妖術師は悲しいことに、自らの利益を最優先に考えて、他人を利用することにけた傲慢な連中ばかりだったからです。

 という私も人の事をどうこう言えた身分ではありませんが、少なくとも悔い改めて、早晩に変節した次第ですので、其処そこは御容赦下さい。

 さて、余りに堅苦しい前置きは人を無知に陥れるというもの。この位にして、そろそろ妖術師ケストナーの話を始めたいと思います。

 わたくしめのつたない文章では御座いますが、どうか最後までじっくりとお読み下さい。

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