第116話 地上への道(2)

 カプセルの部屋の次は白い細長い部屋だった。

 片面に白い扉がいくつも並んでいて、そのうち一つの前に物体は停まる。

 同時に白い扉の1つが自動的に開いた。


「その扉の中に入って下さい。身体を洗浄した後に衣服を供与します」


 つまりはシャワー室だなと思いつつ和己は入る。

 入ると同時に扉が閉まり、少し先の床の中央に赤い丸印が浮かび上がる。


「赤い丸印まで進み、目を閉じて下さい」


 シャワーが来るな、と思いつつ和己は指示に従う。

 目を瞑ると同時に温かい液体が上部から注いできたのが感触でわかった。


 やっぱりこれはシャワー室だ。

 温水は様々な方向から降り注ぎ、和己の身体を洗い流す。

 と、今度は周り一面から温風が吹き出し始めた。


「ある程度乾いたら前方のスペースにお進み下さい。タオルも用意してあります」


 和己は顔を手で拭って目を開ける。

 その時ふと髪の毛もちゃんとある事を意識した。

 しかもあまりむやみに伸びている感じでも無い。

 流石未来のテクノロジー、と思いながら前に進む。


 横に棚があり、タオルがおいてあった。

 持ってみるとバスタオルサイズのタオルだ。

 ちなみに和己が自分で風呂に入る時は普通のタオルを使う。

 なので勿体ないなと思いつつ貧乏性の和己は身体を拭く。


 一通り拭き終わったな、と思ったら今度は逆側の壁が開き、別の棚が出てきた。

 下着まで含めた服一式が置いてある。

 ただ履き物は靴では無くサンダルで靴下は無いけれど。


「そちらの服に着替えて下さい。使用済みのタオルは置いたまで結構です」


 この服には見覚えがある。

 高機能繊維製の紺色ポロシャツとアウトドア用にもなる高機能素材製チノパン。

 どこぞのゲームのショッピングセンターで調達したのと全く同じだ。

 これは偶然かシステムの陰謀か。


 そんな事を思いつつ着替えてサンダルを履く。

 ついでにタオルがあったのと同じ棚にあったブラシで少し髪を整える。

 うん、ちょっと記憶と顔が微妙に違う気もするが多分いつも通り。

 そう思ったところでまたアナウンスが入る。


「それでは先にお進み下さい」


 次の部屋にあったのは鞄、靴下、靴。

 それと道案内等が書かれた紙数枚と鍵4つ。


「着替えた後は案内に従い、新しい自宅へと向かって下さい。なお鉄道等の料金は現在の処無料となっております」

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