第107話 続いている日常(2)
菜月は階段を下りてリビングの扉を開ける。
「行ってきます」
中に居る両親に声を掛けて扉を閉め玄関へ。
外へ出て右回りでぐるっと回ってある家のインタホンを押す。
「今行く」
返事から12秒後、和己が玄関ドアを開けて出てきた。
そして2人は並んで駅へと向かう。
「しかし思った以上に変化が無さそうだな。電車も通常通り運行しているらしいし」
「変化が無いのかな。それともそう装っているのかな」
「まあ仮想空間の中の世界だから装うのも簡単だろうけどな」
「装っていると思う?」
「実はあまり思っていない」
そんな事を言いながら歩いて行く。
街の様子もいつもの朝と変わらない。
強いて言えば通勤中のサラリーマンの数が少ない気がする。
これは菜月の父と同様に本日は臨時休みの者が多いからなのだろう。
他はいつもと変わりない。
コンビニの店員も駅員もちゃんといる。
これも勤務している限り給与等は保証するという確約のおかげだろうか。
計算して家を出る時間を決めているのでそれほど待つ事も無く電車は来る。
電車の中はサラリーマンが少ない分、いつもより空いていた。
ただ空席は無い程度には乗車していたので2人はドア付近で立っている。
まあ目的地までは2駅なのでわざわざ座る事も無い。
予備校があるのは学校と同じ駅。
通っているのは全国チェーンの大手予備校の分校だ。
場所はあの桜ヶ丘市民センターの隣である。
つまり駅からすぐ。
「じゃあね」
「じゃあな」
入口を入ったところで2人は別れる。
和己は1階奥の小さい教室へ、菜月は2階の中教室へ。
和己と菜月は受講クラスが違う。
和己は某最高難易度国立理系用の特別クラス。
何でもクラス分けテストでここの分校史上最高の順位を叩き出したらしい。
予備校側は都心にある大型校の特別クラスを勧めてきたそうだ。
でも和己は『どうせ通信で同じ授業を受講できるんだろ』とここに決めた。
ちなみに菜月は一応同じ大学の名前はついているが、事実上はそこ以外の国立上位校狙いの文系クラスである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます