第12章 夢の終わりと新世界
第106話 続いている日常(1)
和己と菜月が中等教育学校6年生に進級した4月のはじめの日。
ついにゲーム内で語られていた事実が公式に発表された。
新聞はもちろん、テレビも朝からその関係のニュースばかりをやっている。
某民放はそれでも朝のアニメや子供番組を変更せず放送して、視聴者から賞賛を浴びていたようだけれども。
そういう訳でそれなりに大きな反響はあったのだが、和己や菜月が当初思っていた程の強烈な反応は無いようだ。
テレビでもこの関係で何か特別に事件があったとか、そういうニュースは流れていない。
何事にも官邸前で抗議する集団がやっぱり官邸前で抗議している位だ。
この期に及んで官邸前で行う抗議に意味があるのかは疑問だが。
理由は色々あるだろう。
でも主な理由ははっきりしている。
発表内容そのものにについて、ほぼ全国民が知っていた事だろう。
事実と思っていたかどうかは別として。
例のゲームを発見してプレイした限られた人だけでない。
あのゲームはその後アトラクションとしてオープンし、それなりの客を集めゲームや仮想世界としてあの世界観をアピールした。
更に昨年秋ころからゴシップ紙や雑誌等でそんな内容の噂が掲載されたりもした。
それらの内容を元に国会で質問をした野党議員に対しては官房長官は『それは雑誌記事での内容であり確認がとれている事実かは判明していないし官邸も答えるべき問題とは思わない』とはねつけたのだが。
「いやあ、今日は取り敢えず自宅待機だってさ。うちの会社も仮想なんだろうけどな。
明日からは外の環境やそれに対応した仕事の教育や訓練が始まるんだと。いままで通りの会社で」
「まあ詳しくはニュースや色々を見ないとわかりませんけれどね。慌てても意味は無いですしね。取り敢えず現在の勤務環境や給与等は継続している限り保証するって言っているし大丈夫じゃない」
という感じに菜月の両親もそれほど驚いても慌ててもいない。
菜月が学校のHPを見て確認した結果、どうもカリキュラムは少し変わるもののほぼそのまま授業を続けるようだ。
少なくとも春休み後の登校予定には変更は無いとの事である。
そして春休みから通い始めた予備校についてもWebで確認。
新しいお知らせが載っているが、授業に変更は無いそうだ。
つまり歴史的に新たな事実が発表された記念すべき日である今日も、菜月は予備校へと行かなければならないのだ。
「残念!」
菜月はそうつぶやいて昨日夜準備済みの予備校用ショルダーバッグを手に取る。
そのまま部屋を出て階段降りてリビングへ。
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