第105話 パーティ4人とボーナスステージ(2)

「でもその広告、私も見たけれど結構面白そうだよ。ヴァーチャルリアリティを駆使した極限の映像とリアルな体験。驚くべきシナリオと最後に明かされる真実。あなたは真実に到達することが出来るか、って」


 まるで映画のようなあおり文句だな、と思いつつ和己は菜月に返す。


「要はゲームの焼き直しじゃないか」

「まあそうなんだけどさ」


「でも色々な新機軸もあるらしいよ」

 遙香もどうやらこの件については知っているらしい。


「それに参加アトラクションの早解きチャレンジもやっていて、上位には賞品も出るらしいしさ」


「賞品って何だ」

 少しだけ和己も興味を持ったようだ。


「確かアトラクションの永久パスポートとジョフグルメ券1万円分」


「よし、今度の日曜な」

 瞬殺だった。


 あまりの和己の変わり身の早さに3人の間になんとも言えない空気が漂う。


「本当に食べ物には弱いのね」

「和己だからね」

 菜月のいつもの台詞も和己は気にしない。


「どうせ年号問題とかは前と同じだろうし、日曜なら土曜までに行った人間から何かの情報は得られる筈だ。例によってSNSを分析して情報をまとめる。体力問題は菜月がいればまあ楽勝だろうしな。これから色々美味しくなるシーズンだし、敵として不足は無い」


「こんなキャラクターだったっけ?」

「和己だからね」


 何か菜月のいつもの台詞もため息交じりに聞こえるのは気のせいだろうか。

 そんな菜月と和己、そして遙香を見て冬美は思わず笑みを浮かべる。


 今年の夏は色々あったし。

 例のゲームから始まり、今まで暮らしてきた世界が仮想世界だと知らされた。

 一時は自分も気の迷いから反体制組織の末端で勧誘までやった。

 そして遙香が和己と菜月を連れてきて、合流して4人で一通りシステムが提示した謎を解いた。

 つまり今まで暮らしてきた世界が仮想世界だと認めた訳だ。


 でも結局、それで何が変わったのだろう。

 冬美は思う。

 少なくとも自分達は何も変わらない。

 仮想世界という設定を逆に利用してこうして遊びほうけているくらいだ。

 

 そう、だからきっと大丈夫。

 冬美は思う。

 例え世界が変わったとしても、きっと。

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