第103話 私とあなたとボーナスステージ(7)

 食事を食べた後。


 菜月はもう一度風呂に入りに行った。

 和己も誘われたのだが断固として断った。

 もういい加減勘弁して欲しい。


 そして風呂ついでに着替えてきた菜月とともにこの仮想空間を中断。

 わずかな景色の瞬きの後、2人は和己の家の玄関に到着した。


「これは便利だな。もう電車でわざわざ出かけなくていいみたいだ」

「どうせ無料の食堂代わりに最大限使う気でしょ」


「当然だ」

「やっぱり」


 菜月は時計を見る。

 午前9時10分。


「ちょっと早いけれどもう行こうか」

「そうだな」


 菜月は自宅には友人の家に行っていて、今日の夕方に帰ると話している。

 だからこの家にいるのを感づかれては色々まずい。


 和己は物置の扉を2回、1回、5回、3回ノックして開く。

 その瞬間、また景色は瞬いて変化した。


 ◇◇◇


 白い天井と白い床。

 銀行のATMのような機械と、『更衣室』と書かれた男女別の入口。

 そして2人の女子高生。

 時間より20分近く早かったが、既に遙香と冬美は到着していた。


「おはよう!早かったね」

「まあね。何せずいぶん近くに入口が出来たからさ」

「まさか遙香の家があるマンションのエレベーターから行けるようになるとは思わなかったですけれど」


 そう言って冬美は笑う。


「うちの方もそう。何と和己の家の玄関よ。まあ近くなって便利だけどさ」

「それって和己の家族とか大丈夫なのか?」

「平気よ。和己の家族は海外出張中で当分は和己1人だから」

「なるほどな」


 遙香が頷く。


「ところで今日行く処、実はもう色々設定しちゃったんだ。南国リゾート、今回はホテルビーチだ。プール等もついている。何なら変えるけれど」

「いいわよ。実は昨日もこの装置使って冬の温泉宿に行ってきたし。だから暑い位がちょうどいいかな」


「それって和己も一緒か?」

 遙香が食いついてくる。


「まあね。露天風呂とかも良かったよ」

「それで2人でしっぽりと……」


「ないない」

 菜月は笑う。


「和己と私だしね。全然大丈夫だから」

「ふーん」


 遙香は疑わしげだ。


「それより早く行こう!せっかくだから時間を有効に使わないと」

「そうだな」

 2人はガヤガヤ話しながら更衣室へと入っていく。


 2人に続いて更衣室に向かう途中、冬美がこそっと和己に耳打ちした。


「ヘタレ」

「言うな。自覚はある」


 和己は苦虫を噛み潰したような表情で応えた。

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