第99話 私とあなたとボーナスステージ(3)
「やっほー、和己発見!」
最悪の予想は事実をもって裏付けられた。
おにぎりの残りを持ったまま、振り返らず和己は少し声をおとして叫ぶ。
「何でお前がいるんだよ、菜月。ここは男湯だろ!」
顔を見なくても気配で菜月がにやりと笑ったのがわかる。
というか和己は振り向けない。
振り向くと大変危険だと頭の中が警報を出している。
「へへーん、和己でも確認ミスというのはあるんだね。ここは混浴だよ。男女の入口はだいぶ離れているけれどね」
自分1人で堪能する気だったからそのような点は確認していなかった。
和己痛恨のミスだ。
そして。
「寒いから失礼するよ」
和己に有無を言わさず後ろから菜月が同じ湯船の中に入ってきた。
思わず和己は目を逸らそうとして、気づく。
「へへへへへ。和己にはまだ玉のお肌を見せてあげる気はないからさ。この旅館はちゃんと混浴用に女性には湯浴み着が用意されているしね。どう残念だった?」
「ほっとした」
それは和己の本音だ。
見たくないかというとまあ色々な考えなり意見なりあるのだが。
「それよりどうやってここに来たんだ。まだ夕方7時ころだろ。家はどうしたんだ?」
「へへへへへ、聞きたい?」
菜月はそう言った後、和己の返事を待たずに続ける。
「家に帰って自分の部屋にいたら、和己の部屋の電気が消えて、すぐに居間や台所の電気が消えたのを見つけた。
何かなと思って家と家の間の隙間から見える道路を監視していたら、和己が荷物もって駅方向に歩いて行くのが見えた。
明日も和己とここに来る予定だったし、ならきっとここで夕飯を済ませてついでに泊まろうとするんじゃないかなと思った。
それで私も着替えとか用意して、鶴間ちゃんにアリバイ頼んで家には鶴間ちゃん家に行くって言ってここへ来た。そうしたら予想通りの場所に和己がいるんだもの。笑うしか無いよね本当」
まあ菜月の部屋から和己の部屋は丸見えだ。
更に部屋から駅方向への道路も見えるのは和己も知っている。
でもまだ疑問は残っている。
「ここの仮想空間は個別だろ。どうやって入ったんだ?」
「設定画面で直接ヘルプ呼び出してシステムさんに頼んだんだよ。和己がここに来ただろうから同じ設定で同じ場所に追加頼むって」
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