第11章 ボーナスステージ
第97話 私とあなたとボーナスステージ(1)
「ういーっ、最高!」
和己はお湯に浸かった状態で牛乳を飲み干し、おっさんくさくつぶやく。
お湯の温度はややぬるめの41度。
そして周りを雪が舞っている。
今も小さな結晶が和己の前でお湯の上へと落ち、姿を消していった。
だだっ広い岩風呂には和己以外誰もいない。
見事なまでに貸し切り状態である。
「しかしこれを当分楽しめるってのは、まあ副賞としては悪くないな」
つまりこれは仮想空間の中。
もっと細かく言えば例のゲームの中の大規模娯楽室の仮想空間の中。
ちなみに設定は
○ 露天風呂付き温泉宿
○ 夕食は地元料理プラス刺身と天ぷらで、夜8時開始
○ 季節は冬で、雪が降っている
等々である。
つまりは最初に大規模娯楽室に来た時に多数決で女性陣に蹴られた設定である。
和己は元々1人暮らし。
家族は父母ともに海外へ赴任中という設定である。
本当に存在しているのかは和己すらもうわからないのだが、一応時々電話はある。
でもそれだけだ。
なので一度電車で家に帰った後、着替えを持って再びゲームへと戻ってきた。
飯を作るのも面倒だし買い出すのにもお金がかかる。
しかしここなら全て無料だ。
和己の合理的精神、別名ケチとか貧乏性が行動を後押しした。
「何なら夏休み中ここで暮らすかな」
そんな勝手な独り言すら出てくる始末。
和己の学校には夏休みの宿題というものは無い。
自主的精神で自分で勉強しろというのは建前で、実は6年制公立中等教育学校の色々微妙にずれた進度設定に合った教材が無いからだろうと和己は思っている。
流石に高校の2年3年相当ともなれば受験の事も考えなければならないだろう。
でも今はまだ1年相当だ。
「まあ入試があるかはわからないけれどな」
ゲームでの話が本当なら、その前に地上移住となる筈だ。
「でも入試が無いとも保証できないしな」
なので勉強そのものをサボるつもりはさらさら無かったが、まあ今は今だ。
今年の夏くらいは楽しませて貰ってもいいだろう。
そう思った時だった。
なにか嫌な気配を和己は感じた。
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