第95話 パーティ4人とゲームの終わり

「他に質問は無いか」


「じゃあ、私からも」

 菜月がそう言って手を上げる。


「私達、まあ実態はほとんど和己だけどね、それがこのゲームのエクストラモードを最終クリアした。ほぼノーミスというか迷う事無しでね。

 そこで質問。私達は最初からこのゲームをクリアするべき駒として用意されていたの?それともゲームは”誰かが自然発生的に出てきて”クリアするとして作られたの。システムおよび計画推進者として答えて」


 和己の表情が一瞬だけだが大きく動いたのが遙香にもわかった。

 次の瞬間にはもういつもの無表情になっていたけれど。


「安心していい。答えは後者だ」


 男、つまりシステムはそう言って補足する。


「事実誰もクリアしない、またはクリアを目指さないという可能性もあった。その場合は仮想システム内の治安組織、まあ警察に一般人を装ったシステム側が通報し、彼らによる調査と解放、関係者の処理が行われる予定になっていた。ここもあと10日間クリアされなければそうなる予定だった。

 だから安心していい。君達は全員、純粋なプレイヤーだ。システム側じゃ無い」


「なら私もこれ以上質問はないわ」

 他の3人も頷く。


「それではゲームを終えるとしよう。その前に簡単な事後の連絡だ。

 おそらく明日から数日は警察の調査が入るから自由に中に入れなくなるだろう。


 だからしばらくの間、大規模娯楽室に直行できるようにしておいた。あそこは入る人間毎に仮想空間を変えるから捜査関係者とはちあう心配も無い。

 進入ルートは後程ゲームのプログラムに送信する。あとで確認してくれ。


 他にもある程度の事後処理はしてある。

 例えば君達が警察に事情聴取されたりマスコミに追いかけられたりする事が無いようにする措置等だ。具体的にいえば君達の知り合い、上和田と言った彼以外は救出された相手を知らない事になっている。上和田君だけは事情を説明して了解を取るがね」


 菜月は頷く。

「私も長い長い記事を学校新聞用に書かなくていい訳ね。まあそれは助かるかな」


「有名人になれないのはちょい残念だけれど、まあ私生活が無くなるよりいいかな」

「私もその措置はありがたいわね」

「同意だ」


 男、つまりシステムは頷いた。


「それではシステムの権限において、ゲームクリアを宣言する。

 さらばだ!」


 景色が点滅し、そしてブラックアウトする。

 次の瞬間、気づけば見慣れたエレベーターの中。

 桜ヶ丘市民センターのいつものエレベーターだ。


 軽い浮遊音の後、扉が自動的に開く。

 見えるのは仮想だけれど日常、見慣れた市民センター奥のいつもの廊下。

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