第89話 パーティ4人と|規則破り屋《ルールブレイカー》(2)
「気を抜くな、自分の作業を急げ!」
「その作業が何の意味があるか理解しているか?」
執拗かつえげつなく和己は問い続ける。
「奪取した警備ロボットはこっちの味方になった。同じように権限を奪取すれば他のコントロールも可能だ」
「警備ロボットはこのゲームの構成要素だからな」
「この船だって、この船を率いる艦隊だってゲームの要素だ。ならば警備ロボット同様に権限を奪取するのは不可能ではない」
「ゲームの設定ではな」
和己は笑顔のまま続ける。
「先程第一通信室に行ってきた。このゲームが始まってざっと半年のログを確認した。なかなか大変な作業だったな。艦隊が海底にいて非常時以外は長波による簡単な通信しか出来ないのが救いだった」
「何が言いたい」
指導者がついにそう和己に質問する。
「
このシステム室から異常プログラムを矢継ぎ早に送り込み艦隊の各船舶にプログラム異常を発生させる。
各船舶がそれぞれ独自に所有・使用しているプログラムの同一部分に10パーセント以上の割合で異常を起こすことに成功した場合、プログラムの整合性を判断するためのタイムラグが発生する。
そのタイムラグの発生した隙を狙って大型の不正プログラムを送り込み計画に異常を発生させる。
ロビィ、システムに問い合わせて確認しろ。今僕が言った反乱方法はゲームの設定として正しいか」
「……確認終了。その通り正しいです」
「念の為再度確認する。ゲームの設定として正しいんだな」
「その通りです」
「そういう事だ」
そこで和己は考えさせるようにちょっと間をとり、そして再び口を開く。
「つまり諸君らの作業はゲームに対してのみ有効な作業だ。あくまでゲームに対してな。それがどういう意味か、考えなくてもわかるだろう」
「嘘だ。それじゃあこの作業は実際は……」
男の1人が操作する手を止め、そう声をあげる。
「黙れ!」
「その通りだ。現実には何も起こさない無意味な作業だ」
年長の男の声と和己の声が重なる。
「無意味な作業ではありません。現にこの設定と同じ状況による危険発生の可能性は先日まで存在していました。この設定はその啓蒙のためにエクストラモードに追加されたものでした」
ロビィの補足説明がむなしく部屋に響く。
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