第88話 パーティ4人と|規則破り屋《ルールブレイカー》(1)

「おそらくシステムが何とかするだろう。今回の行方不明事案はシステムの責任でもある。それに仮想世界に必要以上に不安を持たせるような事はシステムとしてもしたくは無い筈だ」


 和己はそう言って一息つき、また口を開く。


「残るステージはもう少ない。面倒だから上部格納庫は無視。中央制御室と作戦指揮管理室を攻めて終わりにしよう」


「あと2カ所ね」

「ああ」


 4人はロボット4台を引き連れて歩いて行く。

 そして中央制御室と案内板の出た扉の前で立ち止まった。


 警告音はしない。


「さて、行くか」

 和己は扉のボタンを押す。


 扉は抵抗なくあっさりと開いた。

 ロボットが襲ってくる事も無い。


 その代わり机や椅子が横倒しに積んであり、バリケード状になっている。

 部屋の幅分をしっかりと固めてあり、突破するのは時間がかかりそうだ。

 バリケードの奥では5人程の男達がそれぞれ端末を操作している。


「これまた面倒な事を」


 その声が聞こえたのだろうか。

 端に座っていた年長っぽい男が立ち上がりこっちを向く。


「我々は最後まで戦いをやめない。それに今の作業が終わればシステムの権限のいくつかが我々の手に入る。そうなれば攻守は逆転する。それまでに入られなければこっちの勝利だ」


 本当だろうか。

 菜月は横目でちらっと和己の方を見る。


 彼は全く動じていない。

 むしろ笑みを浮かべている。


「出来るかな。出来るものならどうぞやってみればいい」


 和己はそう言って笑う。

 明らかに笑っている。


「どうした、何がおかしい」

「いやな、大前提をそもそも忘れているようだなと思ってな」


 不安そうに中央とその隣の男が立っている年長の男を見る。


「どうせはったりだ。自分の任務を急げ」

 年長の男はそう指示するとともに自分も端末捜査を再開する。


 そして。

「お前達はここを何だと思っているんだ?」

 和己はまるで悪魔のような笑みでそう問いかける。

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