第87話 パーティ4人と被監禁者解放

 和己は一度呼吸して、また口を開く。


「もう一度言う。解放されたらB1階の第2指揮所で個人用端末を操作しゲーム中断を選択、このゲームから脱出して欲しい。

 そうすれば諸君らの持ち物は自動的に元に戻る。

 その後再びこのゲームに戻ってくるかは諸君らの自由だ。

 それでは扉を開放する」


 警告音は聞こえない。

 つまり中には敵のロボットはいない。


 和己は扉のボタンを押す。


 扉が開くとともに中からもわっとすえた匂いが広がった。

 それとともに監禁されていた人々が出てくる。


 主力は大学生や高校生風の男だが、中には社会人風もいるし女性もいる。

 人数は合計で100人強といった処だろう。

 当然エレベーターも1回では乗れないし、廊下に人間があふれる事になる。


「敵のロボットはこちらで警戒して対処しますので、取り敢えずは脱出に専念して下さい」


 和己がそう言っているのを聞いて菜月も同じように誘導をする。

 と、見覚えのある大男が菜月の視界に入った。

 元々むさい熊のような男だったが今は髭も髪も伸び一段とむさくなっている。


「草柳、お前達だったのか。助かった」


 菜月と和己がこのゲームに関わる事になったきっかけの男だ。

 新聞部部長、上和田茂樹である。


「私と言うよりほとんどはアイツの仕業ですけれどね」


 菜月は視線で和己の方を指す。

 上和田もすぐにわかったらしい。


「例の剣道部顧問を粛正した奴か。確かに奴ならやりかねないな」


 和己は学内では知る人ぞ知る有名人である。

 剣道部顧問懲戒事案の他にもまあ、知る人ぞ知るという感じだが色々やらかしているからだ。

 新聞部部長の上和田は当然それらの事を知っている。


「それより先輩、早く風呂に入ってきて下さい。なかなか酷い事になっています」


「飯は出たけれど風呂は無かったからな。俺は体質的に気にならないんだが女性陣はなかなか可哀想だった」

「本人は気にならなくても他人には結構きっつい臭いを発しています」


 やっと上和田は菜月が言いたい事に気づいた。


「わかったわかった。それじゃまた後でな。あと今回の一部始終はあとで記事に書けよ」


 そう言って上和田はエレベーターの方へ去って行く。


「そう言えばあの人達、行方不明になった事についてはどう説明するのかしら」

 冬美が疑問を述べる。

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