第9章 エクストラレベル(3)

第84話 4人パーティもうすぐ正午

 その後も5分位和己は端末を操作していたが、どうもめぼしい資料は出てこなかったようだ。

 それ以上印字することもなく、和己は立ち上がる。


「結局あまり心配する事は無いかもな。組織上部からの通信もここ2週間は大分減っているようだ。察するにむこうさんもあまりうまく行っていないんじゃないか」


 冬美も頷いた。


「そうね。レベル5まで辿れば道理に合わないというのがわかるしね」

「それでもしがみついているのはさっきのような馬鹿だけか」


「でもだとすると、この下にいる敵は何が目的なの?」

「どうせちょっと目的を変えて同じ様な事を言っているんだろう。過激派なんてのはそうやってちょっとの違いで分裂して主導権とりあって自滅していくもんだ。歴史がそれを証明している」


 かなり皮肉っぽい口調で和己が言う。


「まあ私達の世界でも生き残った過激派の内ゲバとかあったしね」

「もういい年なのにご苦労なこったよな。さて」


 和己はそう言って立ち上がる。


「次は下の階だがどうする。先に飯にするか。それともとらわれの皆さんを救出するのが先か?」


 ちょっと間が開く。


「本当なら上和田先輩もいるだろうし救出が先というべきなんだろうけれど、一時でもさっきみたいなのの仲間だったというのを考えるとねえ」


「それを言われるとちょっと私も微妙なんだけどね。でも気分としては同じだわ」

 菜月の意見に冬美も同意する。


「じゃあ飯食ってからにしようぜ、でもさっきの連中はあのままでいいのか」


「ほっとけ」

 遙香にそう答えて、それだけでは足りないなと気づいたのか和己は補足する。


「どうせあんな奴らは大した事は出来ないし、実はやろうと思っても出来ない理由がある。それがこの先の切り札なんだがな。

 取り敢えずは飯にしよう。腹が減った」


 それがいかにも本音っぽくて菜月は笑いそうになる。

 勿論本当に笑ったら和己の機嫌を損ねるので何とか我慢したが。


 和己という人格のその辺のバランスの悪さを幼馴染みとして菜月は熟知していた。

 そして強気で押し通しているように見える時こそ実は微妙に危うい事も。


 勿論それを菜月は表に出すことも口にする事も無い。

 和己という個性に慣れているから。


「じゃあこの前のバイキングでいいかな。デザートも美味しいし」

 どうせ和己のそのつもりだろうと思いつつ、菜月はそう提案する。

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