第83話 4人パーティと通信記録
「なかなかに厳しかったわね」
冬美の感想に和己はふん、と鼻息で答える。
「ああいう馬鹿は大嫌いなんでな。実現不可能な理想論を押しつけて何も考えようとしない。自分と意見が違うと容赦無く罵倒したり襲ってきたりする。そのくせ掲げているモットーが『自由と平和』だったりするんだ。自分達の行動は棚に上げてな」
第1通信室の扉はさっきと異なり、ボタン一押しで簡単に開いた。
中は先程の男が言った通り誰もいない。
「何か有用な情報があるか、通信記録を調べてみる」
和己はそう言って端末を操作する。
また先程と同じような年月日と時刻が記されたリストが出てきた。
「最近は通信もかなり減っているな。日付からすると2年前位からか。レーザーによる近距離大容量の非常通信が大幅に減っている。理由は、ヘルプ……そういう訳か。
これは好都合だな。あとは組織関係の何かが掴めそうなものがあれば御の字か……」
和己はそう言いながら画面をスクロールさせて確認している。
時折文書らしきものを開いたりもしているようだ。
和己のいる席の横に設置された装置から時々小さい作動音とともに印刷された紙が出てくる。
どうやら必要なところをプリンタで印字しているらしい。
「どうもさっきの連中は外から操られていたようだな。いくつか通信記録が出てきた」
そう言って和己は菜月にいくつかの印刷済みの紙を渡す。
「世界協調のもと、外の世界で苦しんでいる先発移住民を救えってプロパガンダが来ている」
「どれどれ」
菜月だけで無く冬美と遙香も紙を覗き込むようにして見る。
「本当だ。でも説得力があるのかしらこれ。単に外に出て行ったら先発移住民の二の舞になるだけじゃない」
「だから支持を失ってあそこに4人でこもっていたんじゃないかな」
「でも送ってきたって事はそういう動きが世界中であるのか?」
「そうでもないだろう」
和己も操作をしながら議論に加わる。
「送ってきた上層部が本気でそう考えているのかどうかは怪しいな。これが国際協調組織かどうかも怪しいもんだ。
単にこっちの地上移住計画を邪魔して少しでもこっちの勢力をそごうと考えているという方が信じられるな。
他勢力の弱体化は自勢力の強化、って考えも場合によっては有効だ」
「戦争後だものね」
冬美も頷く。
「資料では戦争についてはほとんど資料を残していないがな。敵対心とかが融和の妨げになる、とかの理由で書いてないんじゃないかと僕は勝手に思っているんだけどさ」
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