第82話 4人と4台と4人から2人
和己はため息をついてロビィに質問する。
「あれは強制送還の対象にはならないか」
「言葉だけではゲームの規則上は攻撃にはあたりません」
「無視するしかない訳だ。結構実害はあるんだがな。いらいらする」
「もういい」
最後まで黙っていた組織側の高校生風が立ち上がる。
「もういい加減うんざりした。俺はゲームに戻る」
彼はそう言って部屋を出て行く。
ヒステリー気味の女もそれでようやく黙った。
「いいの?」
「問題ない」
菜月にそう答え、和己は作業を続行する。
画面をスクロールして何かを確認しているらしい。
「何やっているの」
暇を持て余した菜月がやってきて和己の手元を見た。
「今までの操作の履歴を見ている。何か特異な操作をしていないかの確認だ。行方不明者の関係も少しはわかるかもしれない」
「その関係なら、私が……」
「もう必要ない」
和己はヒッピー風の男の申し出をはねのけた。
「何が起こったかローカルの改変履歴を見ればわかる。行方不明者の関係もな。
端末を切り離した上でローカルな電波暗室とした1階の多目的区画に閉じ込めている訳だ。殺すのは不可能だし危害を加えればゲームルールに違反して罰則規定が実行される。だから最低限の衣食住だけは保持した上でな。
この方法は思いつかなかったな。我ながら未熟だと思うよ」
「私は反対したのだ。それなのに……」
男はいかにも自分は無実だという感じで訴える。
逆に和己は一段と冷たい口調になる。
「自分も閉じ込められそうになったからここへ逃げてきた訳か。そしてそのうちに部下もどんどん離れ、頭のおかしい一部だけが残ったと」
「協力してあの者達を……」
「助けるがお前達と協力する気はまるでない。こっちの人員で十分だ。所詮仲間内での勢力争いに敗れこんな処に閉じこもっている奴に何か出来るとも思えないしな。
さっき言った通り、そちらには何も期待していない」
和己はキーをいくつか叩き、パネルを最初の状態に戻す。
「ここでやるべき事は終わった。行くか」
「では私達も……」
「邪魔だ。行動するのは勝手だがついてくるな」
和己はそう言って、3人とロボット4台を連れて部屋を出る。
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