第80話 ゲームプレイヤーと組織分派(2)

「とりあえず勝手に失礼させて貰う。そっちも適当に掛けてくれ」


 和己はそう言って手近な椅子に腰掛ける。


「それにしてもあんたは何者だ。システムの犬にしては若いな」


「人の話を聞かないと小学校で言われなかったか。僕はゲームのプレイヤーだ。『Novus ordo seclorum』と題されたゲームのな」


「『新世界秩序』か。列強で決めた世界独裁計画」

「どう訳すかもプレイヤーの自由だろうし、それについていちいち反応するのは主義じゃ無くてな」


 和己の後ろの席で女3人はひそひそ話を展開。


「あの態度の悪さは絶対楽しんでるよな」

「私もそう思うわ」

「私もそれについては弁解できないわね」

 味方の筈の3人のコメントを和己は全く無視する。


「ついでに言うと、システムに反対する組織でもここの皆さんはどうも少数派の分派のようだ。なので色々な意味で話を聞けたらありがたいな」

「その態度が話を聞く態度か!」


 和己は更に悪そうな笑みを浮かべる。


「お互い態度が良くないのは事実だな。かとは言っても犬呼ばわりされたり、叫ばないと話せない病人を相手にしたりでは態度を良くしようとも思えないがな。


 さて忠告だ。


 話にならないと判断したら僕はゲームのルールに則って必要な措置をとる。この場合はこの部屋からとれる情報を取った後、ローカル権限の一切を解放し、システムに接続した上で権限変更を不可能にする。つまり正しいゲームの設定に戻す訳だ。これはゲームを正常化する措置だからシステムも協力してくれるだろう。


 つまり決定権はそっちには無い、こっちにはある。それを認識した上で、次の行動に出てくれるとありがたい」


「うるせえシステムの犬!俺達は負けないぞ」


 そう言ってさっきから叫んでいる大学生風の男が叫んで立ち上がった。

 制止しようとしたヒッピー風の男の手をすり抜け、右手を突き出す。


 その右手から炎が吹き出て和己と背後のロボット1体を襲った。

 だが和己は平然として動かない。

 ただチッと舌打ちしたのが菜月には聞こえた。


「ロビィ、必要な措置!」

「了解しました」

 ロビィが炎を全く無視して男に近づく。


「警告します。貴方の行動はゲーム上のルールおよびシステムの規約に反しております。現在の行動を停止しない場合、強制措置を執らせていただきます」

「うるせえ!」

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