第79話 ゲームプレイヤーと組織分派(1)

 第1指揮所前でも警告音は鳴らなかった。


「中にもいないようだな。なら申し訳ないが、魔法を解除してくれ」


「いいのか」

 遙香の疑問の声に和己は頷く。


「相手もプレイヤーならこっちへの危害は加えられない。こっちの自由を拘束しようとするなら改めてロビィ他ロボット一同に頼めばいいからな」


「わかった。解除したわよ」

「同じくね」

「ありがとう。それではまず、お約束を」


 和己は扉の開閉ボタンを押す。

 あっさり反応して扉が動いた。


「お、予想外」


 そして中には4人程の姿がある。

 20代後半の男1人、大学生風の男女、男子高校生風が1人だ。

 警備ロボットの姿は無い。


「思ったより少ないな。それなりの拠点だと思ったんだが」

「このフロアはこれで全員だよ、システムの犬諸君」


 20代の男がこっちを見て言う。

 髪が長い、いわゆる昔のヒッピー風の男だ。


「残念だな。僕はゲームのプレイヤーだ。まあ確かにシステム推奨の遊び方を心がけているがな」


「うそばっかり」

 敵側に聞こえないような小さい声で菜月がそうつぶやく。


「それとシステムの犬と何処が違うんだ」


 和己が悪そうな笑みを浮かべる。


「ゲームのルールに則った話し合いが出来るという事だな。脱出反対派か脱出派か。脱出派なら何からの脱出を狙っているのか。折伏するつもりで話を聞かせてくれれば幸いだ。まだ僕は組織側の本音を聞いていないからな」


「話し合いに警備用ロボットを複数連れて武力誇示か。詭弁だ!」


 そう叫んだ大学生風の男に和己は余裕綽々で笑いかける。


「何せ組織側の事情がわかっていないからな。非常時に備えた対策くらいはするさ。

 それにかつてのリベラルは世界中の紛争は話し合いで解決できると豪語していた。

 そちらも解放を叫ぶならそれくらいの意気でやって欲しいものだな」


 何かどう見ても和己が悪役にしか見えない。

 なおかつ悪役であることを楽しんでいるような素振りすらある。


「どっちにしろそちらの状況はこれ以上良くはなりそうにない。

 ならば一発、話し合いに賭けるのも手段ではないのかな」


 身長165センチの高校1年相当の癖に、そんな嫌みな台詞が似合っている。

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