第75話 パーティ4人ミーティング中(4)

 和己はため息をつく。


「前から微妙に気になっていたんだが、遙香も冬美もメインの魔法が容姿擬態って普段はどんな生活していたんだよ」


「女の子には秘密が多いのよ。ねえ遙香」

 ねえーっと2人でハモっている。


「何か怖いよな。まさか美人局とかやっていないよな」

「犯罪行為はやっていないわ。でも女の子は化粧ひとつで変身できるのよ」


 何故か和己はぶるっと身体を震わせる。


「やっぱり何か怖いからこれ以上は聞かん。聞くと女性不信になりそうだ」


 和己は頭を抱えている。

 何か過去にトラウマでもあったのだろうか。


「ところで和己、これからどうするの。あと気になるのは組織の真の目的の把握とか組織のこの船での行動の阻止だと思うけれど、まさか片っ端から戦闘で潰していこうとは思っていないよね」


 菜月の質問に和己は肩をすくめてみせる。


「そんな暴力的な手段、僕に出来ると思うか?」

「思わない」


「正解だ」

 和己はそう言って一呼吸おいた後、続ける。


「2階と1階をごいごい捜索して組織のこの船のトップを見つける。とっ捕まえて強引に1対1の面談を仕掛けてやる。僕の予想が正しければ奴らは大事な処を見落としている。そこを突いて少なくともこの船の組織だけは壊滅させてやる」


 3人は和己の言った事を少し考える。


「……それって結局、片っ端から戦闘で潰すのと手間としては同じじゃないの」

「対プレイヤー戦闘を行わないだけ気分が楽だ。それにこっちは遵法側だからそれなりの手も使えると思う」


 和己が悪そうな顔をしている。

 菜月は密かに敵である組織に同情した。


 前に和己がこの悪そうな表情と獰猛な笑顔を見せた時の事案を菜月は2件程知っている。

 1回は電車内の痴漢を捕まえて、もう1回は剣道部の顧問を懲戒処分に追いやった。

 つまりはまあ、気に入らない連中に目一杯おしおきをしてやろうという合図なのだ。


 和己は正義という言葉を自分に対しては使わない。

 痴漢も学生にパワハラとセクハラをしていた剣道部顧問も正義の名ではなく、あくまで和己自身が気にくわないからという理由で追い込んだ。

 たとえ追い込む過程で他人に正義を錯覚させる事があっても。


 和己自身はきっと正義とか模範とか規律とかそういったお題目を全く信じていない。

 だからこそ、使えるものはえげつなく使って容赦無く相手を追い込むのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る