第73話 パーティ4人ミーティング中(2)

 冬美も頷いた。


「私もそこが引っかかるの。でも、だとすれば目的は何なの?」


「僕もそれを明らかにしたい。まあ結局は組織の大元に聞かないとならないんだろうけれどさ、でもある程度の予想は出来る。

 例えば現実世界への脱出が本当の目的でないならだ。脱出しない事が目的か別のものからの脱出こそが目的か」


「脱出しない事、って?」

 遙香が尋ねる。


「ああ、その場合の目的は簡単だ。危険な外の世界に出る事無しに安全な仮想世界で生き続ける事。まあ贅沢な暮らしをしたいとか多少のプログラム改変は望んでいる可能性もあるだろうけどな、根本的には今の長期睡眠と仮想世界の組み合わせの維持だ。これは理由もわかりやすいだろ。これが考えられる可能性のその1」


 冬美は頷く。


「それならわかりやすいわ。理由も含めて。でもそれだと言っている事とやっている事が正反対になるわね」


「とすると次の発想になる訳だ。脱出する事は変わらないが脱出する枠そのものが仮想世界では無く別の枠か。

 正直枠にあてはまりそうなものは色々あるからこれだとは言い切れない。

 協定国家等の支配層だけ有利な合意があるとか陰謀を言い出したらきりがないからな。


 でもこの場合は枠が何であれ、狙う場所は簡単だ。

 入植計画の計画そのものを動かすプログラム。これの改変だ。

 1から自分たちで入植計画を作り直すより既存のものを乗っ取った方が手っ取り早いし完成度も高い」


「でもそれじゃこの船だけの話じゃなくなるわ」

 冬美が反論する。


「この船1隻だけの占拠や改変だけでは計画そのものは変えられないと思う。それこそ同じ意志決定の組織内のかなりの船が……って、まさか」

 和己がにやりと笑う。


「答え合わせといこう。ロビィ。日本に属しているこれらの基地で似たような規則破りルールブレイクが発生しているのは何パーセント程度だ?」


 少し間が開いた。

 その沈黙の時間はまるでロビィがため息をついているかのように菜月には感じられた。


「現在時ほぼ全ての稼働中の箱船で帰還シークエンス3が実行されています。

 このプログラムには

  ○ 長期睡眠の時間設定の変更

の他、

  ○ 地上へ移住する計画の周知の一環

として、

  ○ ゲーム等を利用して、現状や移住計画について広報する事

等も含まれています。


 この広報活動等を悪用した帰還シークエンスに対する不正アクセス等の不法活動は稼働中の箱船の98パーセント以上で確認されています。

 現状ではメインプログラムに対する改変は確認されていません。

 しかしサブプログラム等一部の改変に成功したと思われる事例はほとんどの箱船で確認されています」

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