第55話 パーティ4人と潜水基地(1)

「何故わかったのですか」


 和己は素っ気無く言う。


「男の直感。ここで出なければあんたじゃない、そう思っただけだ」


 秋良の微笑みがそのまま苦笑になる。


「貴方もカンなんて使うんですね」


「カンを馬鹿にしてはいけない。色々な観察や思考の結果としてそういった飛躍は生まれるんだ。単なるあてずっぽうで使うのは馬鹿がやる事だ」

「はいはい」


 菜月はあっさりそれで片付ける。


「それで解けていない謎の半分とは、何ですか?」

「例えば2145年協定以外の国の動向だな。締結国をさっと見てみたが中国とロシア等何カ国かが抜けている。その辺の情報が大きいな。

 戦争に関してはわざと触れていないようだからいいとしよう。

 それにまだこの基地全体も回っていないな。一応船内図は手に入れたけれども。

 あとは統合政府の問題とかもあまり触れていないな。細かいことを言えば全体の人口や都市計画等もだな。まだあるけれど、その辺はまだ言わぬが花だな」


「相変わらず容赦無いですね」

「それはお互い様だろう。ゲームクリアが目の前なのにここに居るのは何故だ。また今の連中がクリアして戻っていくのをそのままにしていたのは何故だ。

 このゲームにも疑問があるし、エクソダスにも疑問がある。

 だからじゃないのか、秋良。それとも別の名前で呼ぼうか?」


「かないませんね、全く」

 秋良はそう言って溜息をつく。


 ふっと秋良の姿が揺らぐ。

 輪郭が曖昧になってぼやける。

 そして現れたのはちょっと茶色いショートヘア、色白で小柄な少女。


「冬美……」

 遙香はそうつぶやいて、動けないままでいる。


「ごめんね遙香。本当はこっちへ誘おうとも思ったんだけれど、途中で何が正しいのかわからなくなって」

「ううん、いいの。冬美が元気なら」


 そういって立ちすくんだままの遙香を菜月が押しやる。


「こういう時は素直が一番!」


 もと運動部の170センチ級に押し出されてつんのめりながら遙香は前に出る。

 そしてそのまま冬美に抱きかかえられる。


「……心配したんだからね!本当は。ずっと今まで……」


「これはいい百合」

 横でそんな事をほざいた和己を菜月はぶん殴る。

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