第49話 パーティ3人と客人とランチタイム(5)

「ある一定のレベルになっている人間を全員勧誘している、とは思いませんか?」


「なら何故そんな大がかりな勧誘をするか聞きたいな」

「エクソダスには人員が必要ですから。それもできるだけ大勢の」


「入植計画なら確かに人数が必要だろうさ。でもそれを何故進めるんだ。何もしなくてもいずれシステムが判断して地上に人間を戻すべく活動を開始するだろう。それを待った方が成功率も高いし苦労も少ないだろう。違うか」


「さっきから聞いていますと、既にここの世界が滅びていて人類は長期睡眠でその命脈を保っているという設定をそのまま事実であり前提として話していますけれど、それはいいのですか」


「ゲーム内の議論にゲームの設定を基にするのは当然だろう。それと現実がどれかは別の問題だ」


 和己と秋良がやりあっているのを遙香は黙って聞いている。

 元々遙香はこういった議論や思考ゲームは得意では無い。

 どちらかと言うと思うがままに気分で動く方だ。


 議論や論理担当は友人の冬美が担当。

 それは中学時代からそうだった。


 冬美ならこの議論も参加できるんだろうな、そう思ってふと気づく。


 横に座っているから今まで気づかなかった秋良の右手。

 何かのテンポを取るように右人差し指が軽く机を叩いている。

 それは遙香が知っている冬美の癖と同じだ。


 でも姿形が余りに違う。

 冬美は自分以上に小柄で、髪も少し茶色がかったショートカット。

 顔の造形も全く違う。

 でも目は似ているかな。


 それに……

 遙香は和己の台詞を思い出す。


『姿を変えたらわかるものもわからないだろう』


 つまり秋良は姿形、そして多分声も変えられる。

 なら彼女は、ひょっとしたら……


「それでは貴方はこのゲームの目的を何だと考えているのですか」

「ゲームの目的はこの世界の謎を解き明かす事だって、チューターが言っていたな」

「それではなくて、このゲームを作った目的ですわ」


 遙香の知っている冬美とは口調も違う。

 でも、あの手癖は確かに冬美の癖だ。


 それに自分より頭がいい冬美の事だ。

 口調位は意識すれば変えられるだろう。


 そう遙香は思い、そして秋良を観察しながら冬美の面影を探す。

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