第48話 パーティ3人と客人とランチタイム(4)
「質問不明瞭だな。何を答えさせたいのか問いが不明瞭だ」
遙香は絡まっていく思考から引き戻された。
和己が食べる手を止めて秋良の方を見ている。
「それに説明が出来ない事柄がいくつかあったって、それが別の説を証明づけるという訳でもあるまい。
AがBでないならCという訳では無い。AがBかCかどちらかであるという条件なしではそれは成り立たないんだ。
言い換えよう。このゲームが現実に何かの影響を及ぼす事は確かだ。でもそれはこのゲームの提示している世界が正しいという事の担保にはならない。
違うか、秋良」
和己は憮然とした表情でそう言っている。
遙香にはその表情が、秋良の言葉への異議よりも食べるのを中断された事による不本意さを示しているようにも見えた。
でもいずれにせよ助かったと彼女は思う。
そして秋良は例の笑みを浮かべたままだ。
「それでは貴方は証拠を示せば意見を変えてくれますか」
「それはわからないな。僕は僕だし。ただ証拠があれば見たいと思うのは確かだ」
「それを示すのは難しそうですね、あなた相手には」
秋良は肩をすくめる。
和己は頷いた。
「仮想世界を仮想であると示すのは簡単だ。世界の否定で証明できるからな。
でも真実を真実であると示すのは難しいな。仮想世界の否定は真実とは限らない。別の仮想世界の可能性もあるからな」
「悪魔の証明ですね」
「だな」
和己は頷いて、オレンジジュースを一気飲みする。
「まあそんな形而上学的な会話はやめようか。それよりもっと実際的な事が知りたい。例えば……そうだな。レベル4からレベル5へのレベル上げの方法とか」
「それは貴方に話しても面白くないですね。どうせ教えなくても突破できるでしょうから」
「それでは次の質問、何故秋良さんはわざわざ僕達のパーティを勧誘しようとしているのかだ。他にもプレイヤーはいるだろう。例えばこの船の人員がゲームの設定通り1万2千人だとして、1パーセントとしても100人以上はゲーム内にいるんじゃないか?」
「何故1パーセントなんですか?」
「うちの学校でゲームで行方不明になった人間の数からの予測。まあ僕の推計だけどね」
「本当に容赦ないですね」
「性分でな」
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