第36話 プレイヤー2と不明美少女(2)

「自由意志で脱出出来るのに行方不明になるという事は、もう戻らないという意思表示ではありませんか?」

「自由意志が正常に働いているか、システムが正常に動いているか、その辺の確約が無いと肯定はしかねますね、今の段階では」


 危ないな、と和己は思う。

 彼女の容姿や声はおそらく和己の好みだ。

 偶然では無くそうなっているのだろう。


 つまりはきっと、これは誰かの魔法だ。

 直接の攻撃では無いから魔法は使えるのだろう。

 遙香が城址公園で誤認の魔法を和己達に使ったように。


 なら目的は勧誘か、それとも他の何かか。


 ただ彼女は危険と同時にチャンスでもある。

 何らかの情報を持っている可能性は低くは無い。


 いずれにせよ、もう少し話を続けた方がいいだろう。

 彼女自身の魔法攻撃手段はあくまで魅力的な姿形と声。

 それに注意さえしていればある程度は大丈夫だろうと和己は判断する。


「もう戻らないというのは、それほどの何かがあるんですか」


 和己はゲームを再開する。

 彼女は和己に頷く。


「例えばこのエリア、どういう形で成り立っているか。まさか地中に穴を掘って巨大空間を作っているとは思っていませんよね」

「仮想現実、という答えがお望みですか」


 彼女は頷き、そして和己に質問する。


「それではゲーム開始前にあなたが生活していた場所は何でしょうか?現実、それとも仮想?」


「現実という言葉をどう定義するかによりますね」

「たとえ実態が仮想現実だったとしても?」

「それを事実として大多数が認める。その上で別の解釈を現実として大多数が信じれば」


「つまりは何も信じていないって事ですか」

「目で見て感じられるものは全て現実だ。たとえ仮想現実ここであろうとも」


「なるほど、確信犯っていう訳ね」


 彼女は頷いた。


「なら話を持ちかけるのはもう少し後。ゲームを進めて真相を自分の目で確かめてからの方がいいのでしょう」


「話とは?」

Exodusエクソダス


 彼女は立ち上がる。


「私の名前は秋良あきら。季節の秋に良い悪いの良いという字。話の続きはまた別のレベルでしましょう」


 そう言って彼女は次の瞬間、姿を消した。

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