第35話 プレイヤー2と不明美少女(1)
「失礼します」
和己より少し年上の感じの大柄な少女が和己と同じベンチに座った。
和己も軽く頭を下げ、横にダレそうな座り方を少し真っ直ぐに直す。
それ以外の様子はできるだけ変えないように意識しつつ、和己は少女の様子を伺う。
和己と違い1人の様だし、ならばこんな処に座っているのは変だ。
例えば喫茶店とか、休憩するにはちょうどいい場所は他にいくらでもある。
でも和己は自分からは動かない。
あくまで待つ。
「失礼ですが、宜しいですか?」
案の定、少女の方から和己に話しかけてきた。
「何ですか?」
一応年上の異性なのでいつもより丁寧な言葉で和己は応じる。
「何故こんな処で座っているんですか?」
和己は視線で2人の方を示す。
「連れが服選び中なので」
「ゲームの方は中断ですか?」
「休憩中なので」
少女は魅力的と言っていい笑顔を見せる。
その笑顔が一瞬誰かに似ていると和己は感じた。
誰かは思い出せなかったけれども。
「宜しければここのクリア条件をお教えしましょうか?」
「一度リタイヤして、レベル2最後の管理室で時間を最小に設定、その後このエリアで時間を潰す。違いますか?」
彼女は少し驚いたような表情を見せる。
「そこまで知っているのなら、何故先へ進まないんですか?」
「先へ進むのが目的では無いもので」
「では何を」
「人捜しですよ。このゲームに参加して行方不明になった知人がいるもので」
「あらあら、そうでしたか」
彼女はそう言って頷いた。
「それで手がかりは掴めましたか?」
「生憎さっぱりですね」
「そうですか」
彼女はそう頷いた後、また口を開く。
「もしかしたらその知人の方は戻る気が無いかもしれませんね」
「何故そう思います」
「ここはいつでも自由意志で脱出できますから」
彼女はそう言って微笑んだ。
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