第28話 3人パーティと秘密基地?(4)

 更に和己は続ける。


「今、痛いと思ったのは反射的にだろう。つまりは身体が意思に関わらず反応したわけだ。

つまり身体も反応し目で見る事も出来て考える事も出来て実感する事も出来る世界。これが仮想なら現実と仮想は変わらない。今までと同じで何も変わらない。違うか」


 そして和己は3本目の指を折る。


「3番目にして最後に言うぞ。そもそも僕達はこのゲームをやりに来たわけじゃない。行方不明者を捜しに来たんだ。

 目的を間違えるな。俺達の目的はあくまで行方不明者の捜索。遙香は親友の冬美を探しに来た。そのためにここに来たんだしここに居るんだろう。

 以上何か文句があるか」


 遙香はふっと息をつく。


「そのとおりね。確かに私は冬美を探しに来たんだった。ありがとう」

「礼はいい。じゃあ向こうの機械を確認するぞ」


 和己はそう言って機械の方に歩いて行く。


「それにしても見かけによらず握力あるんだ。腕に跡が残ってる」

「和己、女の子には優しくしなきゃ駄目でしょ」


 そう言って軽くチョップをかける菜月を軽く和己は避ける。


「このように身近に暴力女がいるからな。おかげで少しは鍛えられる」

「誰が暴力女なのよ!」


 2撃目は腕と足と両方で攻めてきた。

 足の方は軽くバックして避けたが反対側の足で前進して来て放った左腕の払いは避けきれない。

 なので和己は両腕で受け止める。


「このように時には握力も必要だ」

「あんまりそういう事を言うと、報酬を減らすわよ!」


「それは困る」

「何よそれ!」


 和己と遙香の声が重なる。

 菜月はふっと苦笑して説明する。


「ゲームに付き合ってもらうのに、毎日昼食か間食のパン1個をおごることになっているのよ。こんな性格の奴だけど頭だけは利用価値があるから」

「食事は重要だ。昔『人はパンのみにて生くるにあらず』と言った聖人がいたらしいが、食わないと人は倒れるからな。去年実感した」


「あれは和己が食費を全て新型パソコンに使ったせいでしょ。よく考えたらあの時の貸しは返してもらってない」

「あの貸しは菜月おまえでなくお前の母につけている。お前の殺人料理は食べると健康を損なうからな。中2の時に実体験済みだ」

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