第27話 3人パーティと秘密基地?(3)

 扉を開けると、何か銀行のATM室を少し広くしたような部屋だった。

 何枚かのパネルによる説明と、ATMのような機械が3台並んでいる。


 パネルは長期睡眠技術に関する説明だった。


「ますます宇宙船じみてきたな」

 そうつぶやきつつ和己はパネルの説明を読んでいく。


『長期睡眠技術はこの計画を支える重要な技術です。超低温生態管理技術による身体の保存の他、脳機能や思考能力等を低下させないための様々な技術の組み合わせによって成り立っています』


「これって何のために使うのかな」

「極端に時間がかかる計画に人間が従事する場合だな。例えば数十年単位以上の時間がかかる宇宙旅行とかな。ただここが地球上であるという設定なら、あまりいい想像は出来ないな」


 和己はそう言いながら次のパネルを読む。


『肉体と同期した速度で思考能力を維持するために、システムは情報を共有した巨大な仮想空間を維持します。この仮想空間の中で人々は実世界と変わらない環境の元生活を体感することになります』


「つまりは全部夢だ、って事」

「このゲームの設定ではな」


 遙香に答えつつ和己は最後のパネルを読む。


『仮想世界での時間の流れは通常の時間の流れの1000分の1です。これは超低温生態管理技術による生態の身体的経過時間と一致させています。また仮想空間の切り替えは本システムによりシームレスに実施することが可能です。内部からの切り替えも専用端末により可能となっています』


「もう嫌!」


 遙香はそう言って顔を伏せる。


「要は全部が嘘だって言いたいんでしょ!全部偽物なんでしょ!」


「それはどうかな」

「でも和己あんただってそう思っているんでしょ!」


 和己はふっと笑う。

 あえて表情を出しているようだ。


「まず第1に、ここはゲームの世界だ」

 和己は指を折りつつゆっくりと話す。


「全部が仮想現実である、というのはあくまでこのゲームの設定だ。しかもまだそれは思わせぶりにそう誘導しているだけに過ぎない。そこまではいいか」


「第2に」

 和己はすっと右腕を伸ばし遙香の右腕を掴む。


「痛い!」

「そう瞬間的に思ったのは仮想か実際か。もし仮想だと主なら何が仮想で何が現実だ」

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