第14話 脳筋ともやし

 菜月はソファーで横になってタブレットでゲームの説明を読んでいる。


 和己はなかなか戻らない。

 もう菜月が戻って10分は経ったと思う。

 そろそろ何か考えた方がいいかな、菜月がそう思った頃。


 ふらっという感じで和己が出現した。

 そうとう疲れているようで、そのままソファーにぐたっと腰掛ける。


「おかえりなさーい」

「ただいま」

「何があったの?」


 和己はソファーに埋まったまま面倒くさそうに言う。


「戦闘向きの技能があまりなかったからな。おかげで最初のモンスターに手間取った」


「私は一撃で倒せたけどな」

「どうせ脳筋な初期設定だったんだろう」


 図星だがしゃくにさわるので菜月はソファーのクッションを投げる。

 クッションは見事に和己の顔面に命中したが和己は動かない。

 それすら面倒という感じに疲れているらしい。


「いったいどんな初期設定だったのよ」


 和己は自分のタブレットを取り出し、何か操作して菜月に渡す。

 菜月は画面の内容を理解すると、思わず笑ってしまった。


「何これ、よくわかっているじゃない」


 職業は高校生(帰宅部)。体力低い。攻撃力あまりなし。防御少しは。速度遅い。

 思考力と注意力以外の欄はこんな感じで酷い言葉が並んでいる。


「こんな画面が出るんだ。でもこれって数値では出ないの」

「現実と同じように数値化出来ないんだと」


「でもこれでどうやって敵を倒したの?」

「一応魔法は持っていた。画面を下にスクロールすると出てくる」


 どれどれ、と菜月は操作する。

 特技の欄に魔法、魔法の欄に爆発、電撃と記載されている。


「こんな処まで本人準拠ね」


 和己は学校で爆発事故を数回やらかしている。

 物理実験部でレールガンを試作した際に使ったコンデンサが不良品で充電中に爆発したのが1件。

 セルロイドを使用した簡易ロケット試作実験で燃焼容器が爆発して飛び散ったので1件。

 確か他にも数回あった筈だが菜月は覚えていない。


 そのせいか物わかりのいい物理の先生が転勤すると同時に物理実験部は廃部になった。

 それ以来和己は帰宅部に専念している。

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