第13話 プレイヤー1と第3チュートリアルのチューター(2)

「そうだ、戦闘で負けた場合はどうなるの」


 チューターはふん、と笑う。


「単体では特にペナルティは無い。ただ負けが蓄積した場合はレベルが下がる事もある。

 まあ別に現実に怪我をするとかそういう事は無いから安心していい」


「それじゃあ、レベルがこれ以上下がらない処まで下がった後に負けたら」

「ゲームが初期化され、ゲームの記憶が君の脳内から消える。携帯電話やタブレットからゲームが消去される。それだけさ」


「ゲーム内で行方不明になるとか、現実に戻れなくなるという事は無い?」

「それは無い。戦闘中やイベント中でも無い限り、自発的意志でいつでも戻れる筈だ。自発的意志で戻らないと選択したら別だがな」


 つまり自発的意志なら行方不明になるのは可能なんだ、と菜月は考える。


「後は何かある?」

「質問事項があるならそのタブレッドに聞いてみるんだな。大抵の事はヘルプが教えてくれる筈だ。

 あとひとつだけ留意事項だ。このゲームではプレイヤー同士の戦闘は認められている」


 プレイヤー同士の戦闘、という意味を理解するのに菜月は少しだけ時間を要した。


「それは何のため?」

「意見が相反した場合の解決手段のひとつだな。ただプレイヤー同士の戦闘結果がゲーム進行に関係する事は無いし戦闘でレベルが上がる事も無い。

 なおプレイヤー同士の戦闘は現実世界でプレイヤーが近接していて、かつお互いが合意した場合しか発生しない。だから戦闘を避けたいなら合意しなければいいだけだ。

 他にも多人数によるチームプレイとか色々なシステムがあるが、詳細はタブレッドに説明書が出ているしヘルプに聞けば応えてくれるだろう」


 ふと菜月は感じた事を言ってみる。


「大分説明がいい加減になってきたわね」

「細かいルールは刻々と変わる。新しい規則破りルールブレイクが出るたびに改訂するからな」


「生真面目なのね」

「公正で無いゲームはつまらないからな」


 何故かチューターの今の台詞だけは今まで以上に和己に似ていた。

 思わず菜月は笑いそうになる。


「ゲームのチューターもそんな事は気にするんだ」

「当然だ」


 ますます和己に似た感じでチューターは言う。


「ここはあくまでゲーム世界だ。そしてゲームの目的は広まる事と遊ばれる事。

 それはこのゲームとて同じだ」


 何か今のチューターの反応が妙に菜月のツボにはまったので、とりあえずチューターの今までの気に入らない面についても菜月は許してやる事にした。

 チューターにとってはそんな事、どうでもいい事なのだろうけれども。

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