第12話 プレイヤー1と第3チュートリアルのチューター(1)
「さて、第3チュートリアルだ」
相変わらずチューターは和己の姿をしている。
それがやっぱり菜月の気に障る。
「今度は何をすればいいの」
「戦闘だ」
とっさに菜月は左足を後ろに引く。
右手に持っていたタブレットが木刀に変わる。
菜月の右手に重くて堅い感触。
木刀の先をあえて前のチューターには向けず、左後ろに落としたまま軽く左手を木刀の端に添える。
「反応が早いな。だが今回の敵は僕じゃない。さあ、出現するよ」
菜月から見てチューターの右側、3メートル位の場所に黒色の人型が出現する。
大きさは成人男性の平均くらい、全身が真っ黒で輪郭がはっきりしない。
キンキンキンキン、そんな警告音のような音が菜月の耳に響く。
音はまさに人型から響いているようだ。
「今聞こえるのは危険を意味するアラートだ。敵の状態や反応、自分と比べての強さによって音の高さや質が変わる。これはまあ覚えてもらうしか無いな。まあ意味は本能的にわかると思うが。
ちなみにこの敵は交渉や懐柔は不可能だ。という事で、戦闘開始!」
警告音が一層甲高くなるとともに、人型が動いた。
両手をあげて襲いかかるような姿勢で菜月に近づく。
菜月はすっと木刀を青眼に構え直し、そして。
一気に菜月が飛び出た。流れるような動きで木刀が右横へと打たれる。
確かな打撃の感触を確認しつつ、菜月は右へと移動し距離をとり、構え直す。
人型は打たれた地点から動かない。
木刀が打った左腹の輪郭がぼやけていく。
そして輪郭が徐々に薄れていき、ある程度薄れた時点で一気に消失した。
気のないいい加減な拍手の音が聞こえる。
「一撃とは見事だな。普通は2~3撃は必要だし、反撃も1回は喰らうんだが」
「それでこのチュートリアルで他に覚えることは」
チューターは薄く笑う。
「あとはこのゲームのシステム関係をいくつか、だな。
このゲームにはレベル制度がある。
この場合のレベルは強さでは無くて権限だ。
レベルが上がると出来る事が増える。例えば新しい場所に行ける、新しいイベントに参加できるとかな。
基本的にはイベントクリアでレベルが上がる。
まあこれは自分で体験することだな」
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