第9話 プレイヤー1とプレイヤー2
初期装備の両手剣『木刀』や防具の『普通の服』等の説明を聞いた後。
「それでは、次は第3チュートリアルだ。この次ゲームを起動すると第3チュートリアルになる。第3はそこそこ時間がかかるから、時間があるときに起動すればいい」
その台詞とともに周りの景色が再び変化する。
気づくと元通りの新聞部の部室。
菜月のディパックと和己のショルダーバッグ。
そして和己はいない。
代わりに机上にコピー用紙に走り書きされたメモがある。
『もし戻ってこれたならさっさと家に帰れ。同様に僕も戻れる可能性が高いから心配するな』
見覚えのある癖字でそう書かれている。
腕時計の表示は16時32分。
下校時刻は17時15分なのでまだ少し時間がある。
和己のバッグがあるという事は、彼はまだ家に帰っていない。
とするとトイレ等で席を外したか、菜月と同じようにゲーム世界へ行っているか。
だとすればそう待たずに戻ってくるだろう。
菜月はそう判断し和己を待つことにした。
実際、3分も経ったろうか。
唐突に見覚えのある姿が出現する。
和己は菜月を見ると、さっきのチューターそっくりの表情と仕草で肩をすくめてみせた。
その辺りが何か微妙に菜月の気に障る。
「どうしたのよ、一体」
何がどうなっているのかわかった上で菜月は和己を問い詰める。
和己は当然のような表情で同じようなタブレットパソコンを出した。
「一応予備は持ってきたからな。使うとは思わなかったが」
何かやっぱり腹が立つので菜月は和己を右手でチョップした。
和己は左手でさっとチョップを捌く。
実は今まで何十回となくやっている相対動作なのでお互いに慣れている。
「とりあえず今日はここまでにしよう」
和己は菜月のタブレットを取り上げ、自分のとともに電源を落とす。
「ああ、私のゲームが」
「それは俺のタブレットだ。違ったか」
和己は正しい。
「その代わり、僕も今日はこれ以上ゲームを進めない。何ならこの部屋にこのタブレットを置いておいてもいい。どこか鍵のかかるしまえる場所が無いか。菜月しか開けられない場所がいい」
菜月は机の引き出しを開ける。
「ここなら鍵がかかるわ。私専用よ」
「なら頼む」
和己は電源を落としたタブレット2台を菜月に渡した。
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