第6話 オペレーターとクライアント

 翌日の放課後。

 他に誰もいない新聞部部室で、和己は鞄の中から小型のタブレットを取り出す。


「それは?」

「一応SIMも入るタブレットパソコンだ。アンドロイドだから当然例のゲームもインストールできる」


「なせ携帯電話にインストールしないの」

「個人情報を抜かれたら嫌だからな」


「そういう余分な物を買うから食費まで減るんだよね」   

「余計なお世話だ」


 等と言いながら和己は色々操作してゲームをインストールする。


 インストールそのものは簡単に終了。

 あっさりと

『Novus ordo seclorum』

と記された起動画面が現れる。


 菜月は思わずつばを飲む。


『究明を開始しますか?』

 の表示の下に『はい』、『いいえ』のボタンがある。


「さあ、覚悟はいいか」

「当然でしょ」


 和己は『はい』のボタンをタップする。


『それではチュートリアルを開始します。貴方が真実へたどり着かん事を』


 その表示が消えて、画面上に1個の林檎が表示される。


『まずはこの林檎が画面から出てくるように念じて下さい』


 その表示が出たところで、ビーッというエラー音が鳴る。

 画面上に白いメッセージウィンドウが出た。


『プレイ可能人数は1人です。複数プレイは出来ません』


 和己が誰にもわかる位に顔をしかめた。


「変だ。このタブレットには内側カメラもないし、どうやってこっちの人数を検知しているんだ?」

「カメラでだめなら、マイクとか?」

安全プライバシーのためにマイク機能は殺してある。他に人を検知できそうなセンサはこいつにはついてない」

「人が行方不明になるようなゲームなんだから、それくらい出来るでしょ」

「納得はいかないな」


 和己は顔をしかめたままだ。


「とりあえず貸して。私がやってみる」


 菜月はそんな和己からほいっとタブレットを取り上げた。

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