第4話 解説者と聴講生

「解説が必要か?」

「当然!」 


 駅前にあるドーナツ店。

 菜月が和己をむりやり連れ込んだのだ。


 無論菜月にはそれなりの計算がある。

 和己は小さくて細い割にとてつもなく燃費が悪い。

 そのくせいつも小遣いがピンチで昼食代すら極端に節約している。

 だから食べ物で釣れば和己を誘いこむのは簡単だ。

 その事は菜月は心得ている。


 結果としてドーナツ店のテーブルで2人はそれぞれの品をぱくつきながら、和己が印刷した紙を眺めている。 


「この紙ってどういう意味があるの」


 紙には、色分けされた丸がいくつも描かれ、それぞれが様々に線で結ばれている。

 丸の中にはそれぞれ『悪魔のゲーム』、『危険』等と単語らしき物が記されている。


「これは『ゲーム』に関してSNSでつぶやいた単語を抽出して、単語ごとの関係を表にした物だ。なお関係なさそうな処は削除した」


 菜月は少し考える。


「つまりこの『悪魔のゲーム』と線でつながっている言葉同士が関係があるって事?」

「その通りだ」


 菜月は『悪魔のゲーム』の丸からつながっている線の先の言葉を拾ってみる。


「『危険』、『消える』、『あり得ない』、『超能力』、『超現実』……あれ、この『Novus』って何?」

「気づいたか」


 和己一見無表情のままに見えるが、実はにやりと笑ったのが菜月はわかる。


「正確にはNovus ordo seclorum。訳すと『時代の新秩序』といった処か。おそらくはこれが『悪魔のゲーム』の正しいタイトルだ」

「凄い、あれだけの作業でここまで……」


 台詞の最中に菜月は他にも妙な単語があるのに気づく。


「じゃあこのNovus.apkというのは?」

「おそらく『悪魔のゲーム』のインストールファイルだな。apkというのはアンドロイド携帯用のインストールファイルの種類だ」


 菜月はその言葉の意味を少し考える。


「ならそのファイルを探してアンドロイド携帯にインストールすれば『悪魔のゲーム』が動くっていう事?」

「正解」

「じゃあこのファイルを探してアンドロイドの携帯に入れれば『悪魔のゲーム』が動くのね。私のはiPhoneだけれど大丈夫かな」

「iPhoneにはapkファイルはインストールできない。まあ待て。その前に、だ」


 和己は菜月の顔を見る。

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