第3話 検索者と見物者

「それでどうする。危険だと言われたからには近寄らない。それが一番確かで安全な方法論だと思うが」

「本気でそれ言っているの……和己なら本気か」


 和己は頷く。


「ああ。好奇心猫を殺す。君子危うきに近寄らず。今回は本人からも危険だというメッセージが来ているんだ」

「でも……」


「まあ何とかしたい、というのもわかるけどな。そこで条件だ」

「えっ」


 菜月は和己の顔を見る。

 和己の表情は読みにくい。

 基本的に無表情だからだ。


「危なくない範囲までなら協力はしよう。下手に動かれて危険な目にあわれたらこっちの目覚めが悪い」

「それじゃ……」

「ただし条件がひとつある。絶対に一人で勝手に動くな。守れるか?」


 菜月は即座に頷いた。


「わかったわ。お願い」

「あと成約報酬でコロッケバーガー1個」


「……チーズコーンパンで妥協しない」

「いいだろう。じゃあパソコン貸せ。ネットにつながるんだろう、ここのも」


 菜月は頷く。


 ◇◇◇


「編集にしか使わないんだろ。なのにこんな高性能なパソコンを使うのは勿体ない」


 和己はそう言いながら菜月の知らないソフトをいくつかインストールして実行している。


「今やっている作業は何なの?」

「代表的なSNSから『ゲーム』に関する情報全般を引っこ抜いている。このパソコンなら50メガ程度は時間内に処理できる」


 和己は相変わらず無表情だが、機嫌は悪くないのが菜月にはわかる。

 和己はプログラミングとかこういった情報処理が大好きなのだ。


「それをひたすら読んで調べるわけ?」

「テキストマイニングという方法で処理する。これも優秀なフリーウェアが出ている」


 菜月にはわからない単語が出てきた。


「それで何がわかるわけ?」

「『悪魔のゲーム』に関連する単語だ。ゲームの正式な名称やファイル名、うまくいけばゲームファイルを探すことが出来るかもしれない」


 そう言いながら和己は何やら色々作業をしている。

 下校時間に何やらA3を数枚印刷して、そして和己はにやりと笑った。

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