第2話 依頼者と被依頼者
桜ヶ丘中等教育学校新聞部。
4半期に一度A3縦折り2枚、つまりA4で8ページの新聞を出すのが主な活動だ。
この前夏休み準備号が出たので、今は比較的暇な時期である。
狭い部室の長机の前に和己は座らされる。
「で、何の用だ? 他の部員はいないようだが」
「今は自分の記事を追いかけている時期だからね。ここにはいないわ」
菜月はそう言って背後の棚から青いバインダーを取り出しながら言う。
「5年の上和田先輩、知っている?」
「名前だけは。確かここの部長だろ」
「そう、その上和田先輩が行方不明になったの」
和己は顔をしかめる。
「それだけなら警察案件だな。素人が出る幕じゃない」
「普通の事件ならね」
菜月はバインダーを広げる。
「これが上和田先輩が最後に追いかけていた案件、通称『悪魔のゲーム』」
和己はバインダーに挟まっている紙片をちらりと斜め読みする。
掲示板やSNS等の記事を印刷したものがほとんどだ。
「あれはただの噂だろ」
「だといいんだけどね」
菜月が何枚かバインダーのページをめくる。
『ゲームが原因か、謎の行方不明事案多発』
そんなタイトルが目に入った。
雑誌の記事のコピーらしい。
「週刊誌の記事なんて何でも興味本位で大げさだからな。この記事をざっと読んでも共通点はゲームらしいという程度の根拠しかないしな」
「あとはこれを見て」
菜月が自分のスマホを取り出し操作する。
ある画面を出して和己の前へと出して見せる。
非常にメジャーなSNSの画面だ。
その画面メッセージ最後の日付は今から1週間前の17時。
『あのゲームは危険だ。近づくな』
その発言で終わっている。
「このメッセージは上和田先輩のか」
菜月は頷く。
「ええ、これが上和田先輩の最後のメッセージよ。この後行方がわからなくなった。一応警察にも見せたけど発信場所はこの近所らしいけれど不明だって」
「状況は以上だな」
和己の言葉に菜月は頷いた。
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