第1章 レベル0
第1話 捕食者と非捕食者
県立桜ヶ丘中等教育学校4年5組の教室はB棟南西の角にある。
6限終了のチャイムが鳴るのが15時ちょうど。
古文担当の中年女教師代官先生はいつもチャイムと同時に授業を終わらせる。
日直の号令が終わる。
同時に
本日は掃除当番ではないし部活動も何もやっていない。
ダッシュで帰れば15時23分発の各停に乗って家に帰れる。
その後の電車は混み始めるので和己は好きではない。
今日もその電車に間に合うはずだった。
しかし。
階段直近の廊下上に障害が1件あるのを和己は確認した。
すらりとした長身と短い濃茶色の髪。
和己は廊下の反対側へ移り走り抜けようとするが既に遅かった。
すっと和己の襟首が掴まれる。
「ごめん和己、ちょっと相談したい事があって」
「それが頼み事をする態度か」
「だってこうしないとすぐ逃げるじゃない」
彼女は4年3組の
剣道初段にして現在は新聞部所属。
和己と同じ渋谷小学校からここへ入校した2人のうちのもう1人。
顔見知りという以上に知っている仲である。
幼馴染みとも言えるし腐れ縁とも言う。
自称の身長170センチは和己の自称より5センチ高い。
「早く出ないと電車に間に合わん」
「電車は15分おきに出ているよ」
「混むから遅い電車は嫌いだ」
「人生諦めが肝心よ」
和己はため息をひとつつく。
「何の用だ」
「ちょっと面倒なんで、部室で話しましょ」
「わかったから手を離せ」
かつて剣道で鍛えた菜月の握力は帰宅部インドア派の和己には振りほどけない。
「まあうまく行ったらロワールのクリームパン位おごってもいいわよ」
「内容次第では太田屋メンチ入りメンチバーガーパンにするぞ」
ロワールとは学校内に入っているパン屋で和己の常食である。
ちなみにメンチバーガーパンは180円、クリームパンは110円。
「まあ依頼が解けたらそれくらいいいわ」
その素直さが逆に和己には不気味に感じる。
何をさせる気だろう、一体。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます