最終話 光あれ
私の名前は小山ヒカリ、花も恥らう19歳。
ごくごく普通の女子大生、もうビームは出ません。
「ねえいいじゃん、LINEだけでいいからさぁ~」
「あの……困ります。それに危ないですよ。」
「いやいやいやいや、僕ら全然危ないとかそういうんじゃないから!」
「そうじゃなくて……」
現在しつこいナンパに遭っています。以前ならこういう時は大抵ビームが出てうやむやになるんだけど今はそういうこともない。
ただ危ないっていうのは本当で、むしろ以前より今の方が危ない。何が危ないってもちろんナンパ野郎の身が危ない。
「おい、邪魔だお前ら。」
壁際に追い込まれていた私とナンパ野郎の間に突然割り込んできたのは、長身の女性だった。
輝くような金髪と、眩しく光るような白い肌。ノースリーブにヘソ出しでその肌を惜しげもなく露出させながら、体に密着するような服装が見事なボディラインを示している。
「うぉっ!すげー美人さんじゃん!お友達なの!?」
「ねぇー、僕たちともお友達になってぇ~!マジでマジで!!」
ナンパ男はとても軽薄で非常に気持ち悪いんだけど、その女性は眉一つ動かさない。
「きえろ、ぶっとばされんうちにな。」
「えぇ~何で~?ほらこっちも2人だし、これから遊ぶんなら一緒に遊ぼうよ~」
「いやいや、こっち3人だからね。」
遅れて現れたのは、おなじみユキちゃん。一回り大人っぽくなったユキはこれまた美人の装いで、ナンパ男の眼中から私が外れていく様子が手に取るように分かってこれはこれでむかつく。
「――」
「悪いけど――」
ジャコン!
「――お呼びじゃないのよね。」
ナンパ男が何かを言う前に、ユキの背中が開いて無数のアームが飛び出し、ありったけの対人兵器がナンパ男に向けられた。腕を組んで胸を張ったまま多数の武器を構える姿は、なんというかとても格好いい。惚れそう。
銃口に刃物に赤熱した棒に何かバチバチと火花を放つ電極、さすがにナンパ男は腰を抜かして逃げていきました。
「えーんママー!怖かったよー!」
「よしよし、私のためによく頑張ってくれたね。」
安心した途端に私に抱きついて泣き始める金髪の女性――そう、私の体内にあった卵から生まれたビーム星人は、1年足らずでこんなに大きく育ちました。
==========
出産イベントは銀河の存亡を賭けた一大スペクタクルだったんだけど、その全てを語るには紙面が足りないようです。
産まれてきた子はヤマギ博士によりケイと名づけられ、本人の希望により地球で暮らすことになりました。
そうして私はビームも出なくなり、普通の女の子に戻ったと思いきや……
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
『ついに見つけたぞぉー、アージェスの光線女ぁー!』
平和な街の空に突如現れた巨大な飛行物体が、明らかに私たちに話しかけてくる。
『この新たなる空中要塞ピルシムで貴様を倒せば、今度こそ世界は我々のものだぁー!!』
「あー、ありゃ第1話で打ち落とした奴らの残党だわ。」
そしてヤマギ博士からの通信。
『敵襲だな、状況は把握したぞ。すぐ部隊を向かわせるが、そちらは現地判断で迎撃してくれ!』
とても話が早いので助かる。
「よーし、それじゃやろっか!」
ユキが私とケイに抱きついて防音バリアを発生させると、途端に周りの喧騒が消えてなくなり、2人の声だけが耳に届くようになる。
「じゃあママ、行くよー」
私の手をケイが握り、ぬくもりと共に大きなエネルギーが流れ込んできて胸の奥に熱さを感じとる。
結局のところ、ビームが出ていたのは私自身の能力とビーム星人の卵の能力が合わさった結果の副産物なのだという。
卵は成長するのに大量のエネルギーを必要とするが、そんなもん人体から供給できるわけもなし、卵は自力でエネルギーを確保するようになった。E=mc2、質量をエネルギーに変換するという荒技で。
――ケイから流れ込んだエネルギーが高まっていくのを感じる。
過剰なエネルギーを光線化する組織が私にはあるらしい。卵が大量のエネルギーを発生させ、それが宿主たる私にも流れ込んでくることで、ビームが生成されるのだ。
――そして光り輝くエネルギーが溢れ出す。
「必殺!!ブレストブラスター!!!!!」
こうして、私たちの日常と非日常は、新たなメンバーを加えてまだまだ続いていくのだった。
ー本当に完ー
輝け!光線ガール! Enju @Enju_mestr
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