同じものが好きなひとたち
@aoi95m
第1話
あの子はこぼれ落ちそうなくらい大きな目でこちらを見て、少し笑った。笑っているのに大きな目は動かないから、また嘘をついているのだなと思う。僕が何を言ったって何も変わってくれないのに、どうして僕は彼女の話を聞いているのだろう。
「ありがとう、またちゃんと決めたら話すね」
「うん、いつでもいいからそうして。心配してるからさ」
僕は本当に彼女のことを心配していた。
彼女が僕には本当のことを言わなかったからだ。
彼女は冷めた料理を口に運んだ。
大事な相談があるから、今度お昼ごはんでも食べよう、と誘われた。最近オープンしたお店があることを思い出して返事をした。
「気になってるお店があるから行こうか」
相談なんて、別にどうでもよかった。
オープンしたばかりのお店は客もまばらで、僕たちは窓側の隅の席に通された。ちいさな店だからランチメニューは4種類しかなくて、僕はなんとなく食べたいなと思ったプレートメニューを選んだ。彼女は、じゃあ私もそれで、と同じものを頼んだ。
注文からすぐに運ばれてきたサラダを食べながら、最近の授業だとか、友達のこととか、どうでもいい話をした。した、というか僕は聞いていた。勝手にたくさん喋ってくれる人はつまらないけれど楽だ。
そして僕はわざわざ呼ばれて、相談って何?と聞きだせるような人でもない。
メインのプレートが運ばれてきた。
彼女はずっと喋り続けていた。
プレートにはとても美味しそうな魚のソテーがのって、野菜とパンが添えられている。僕はお店にご飯を食べにきたのだから、ナイフとフォークを手にとってソテーを食べようとした。
「あのね、やっぱり、別れようと思ってるの」
僕はソテーを切りながら「そうか!よかった!」と答えた。僕はそのまま魚のソテーを口に運んだ。
「で、いつ別れるの?」
同じものが好きなひとたち @aoi95m
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。同じものが好きなひとたちの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます