立ち、歩き、立ちとまり、去る

モナムール

第1話

僕は立つ。

何がしたいのかなんて分からないけれど、目標なんてなくただ、僕は立つ。

世の中には立ちたくても立てない人がいるのに、僕は目標もなく、ただなんとなくで立っている。

僕は何故立つ。僕は立てない人たちに嫉妬されてないだろう。

僕は大衆の一人だ。僕一人なんて、態々探しはしないというのに、僕は考えている。

僕は歩きたいから立ったんだ。僕は知りたいから立ったんだ。僕は世界を広げたいから立ったんだ。ひょっとしてなんて思ってて、だから立ったんだ。


ぴぃーひょろーぴぃーひょろーぴぃーひょろー。

笛の音が聞こえる。

歩く。ざくざく、僕は石を踏みながら、僕は何かを踏みながら、僕は歩く。

そうだ僕は踏みながら生きてきた。いつだって踏み、踏み、踏み。僕が気が狂いそうな程には、踏み続けてきた。

21年間ずっと踏んできた。もう僕は踏む人間なので、踏まない人間にはなれない。

あらら、僕は罪深さにはらはら涙を流す。


巫女が踊っているのが見えて、僕は立ち止まる。僕は巫女が恐ろそしい。僕の心の内を見抜く気がして、僕は立ち止まる。

僕は巫女を見る。僕は恐ろしい。恐怖を感じる。神聖だからだ。穢れているからだ。彼女は巫女で、同時に死と共に生きる一人の人間だからだ。

僕は知った。恐怖の本質を。僕は知った僕を。

地面から闇が広がる。夜の巫女が踊る。

僕は踏む。石を。何かを。そうやって生きる、生きてきた。

「何を今更...僕は」

風は攫う、僕の声、想い、全てを。


僕は立ち、歩き、立ち止まる。

その1つ1つは空っぽであったり、残酷な真実であったり、恐怖であったり、色々と含まれていて、カラフルだ。

僕が題名をつけるならば、立ち、歩き、立ち止まる、だなんて考える。

だって、だって、僕は立ち、歩き、立ちとまり、色々と考えてる、重なっている、カラフルである。

そうだ。もっとカラフルにしよう。


僕は歩き、神社を去る。

暗い闇と静寂に支配された空間で、僕の為にだけ用意されたなんて馬鹿なことを考えながら、僕は月を見上げる。

僕は去る。何から去る。あの空間から去る。「巫女から去る。去ることのできないこともたくさんあるなァ」今度の僕の言葉は風に攫われない。例えば、踏むことから去ることなんてできない。

死んでも、僕は踏んだ事実と生きて、僕はやっぱり踏み続けるんだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

立ち、歩き、立ちとまり、去る モナムール @gmapyon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る