第1章7 こちら、ルクシャード選手団御一行様




「だーっはっはっはっっ!!!」

 スィルカが話し終えた途端、リッドの大笑いが部屋中にこだました。



「いやー、社交場パーティーでサプライズプロポーズをする貴族を数回見たことありましたけども、あのプロポーズは衝撃……いえ笑劇的でしたわー、ぷぷぷっ」

 スィルカも、思い出しただけでまた笑いがこみあげてくるとばかりに両腕で腹を抱える。

 その隣ではミュースィルも口元に手を当てて、あれは本当に笑いを止められませんでしたねとばかりにニッコニコだ。


「……ミュースィルの買い物の話だったはずだったのにな、まったく」

 もの笑いのタネにされて疲れたように息をつくシオウ。

 その目の前ではハルも、ケラケラと小気味良い笑い声をあげながら絨毯の上をのたうち回っていた。


「さっすがシオウくんだよね。まさか第一王子さまから告白されるとかっ、やばっ、いくらでも笑えてきちゃうよっ♪」

「まーまー、あんまシオウをいじめてやんなっしょ。おもしろおかしポリポリな話だったのは間違いなーけども」

 ジクーデンがスティック状の焼き菓子をポリポリ音を立てながら食べる。フォローしている風だが、実際は彼流のイジり方である事をジクーデンをよく知る者から見れば明らか。

 ガントはバカバカしいとばかりに腕を組んだまま、笑気を鼻息で一蹴した。




――――――ここはアルタクルエ神聖公国、国際戦技大会に出場する選手団に割り当てられた屋敷の1つ。

 大会までは各国選手団ごとに、全員が1つの屋敷内に居住する。


 ルクシャード皇国選手団は割り当てられた屋敷の大広間に集まり、大会に向けてミーティングを行っていたのだが、大会主催者側の不備により日常生活物資の搬入が遅れる事が発覚。

 なのでモーロッソとエイリー、そしてノヴィンにルクシャード皇家のメイド数人が急遽、物資調達に出かけたのを機にミーティングは一時中断し、面々は休憩していた。




=== ルクシャード皇国の選手団の構成 ==================


 選手団長:ガント=フルレ=ガンツァーヴリッグ (元チーム・ガント)

 スターティングメンバー:

   ー リッド=ヨデック (元チーム・リッド)

   ー スィルカ=エム=ルクシャード (元チーム・リッド)

   ー ジクーデン=ベルオ (元チーム・ガント)

   ー ハル=ミカミ=ミアモリ (元チーム・ハル)


 セカンダリーメンバー:

   ー モーロッソ=レスケルダンケ (元チーム・モロ)

   ー エイリー=スアラ (元チーム・エステランタ)

   ー ジッパム=ラーザリケイ (元チーム・ハル)


 試合には5人1組でのチーム戦となるが、スターティングメンバーとセカンダリーメンバーは、チーム状況などに応じてその都度、入れ替えが可能。

 試合中も入れ替えでき、最終的に1試合5人で戦い切ればよいルールなので、セカンダリーメンバーもサブではなく事実上のメイン選手である。


 補欠:

   ー シオウ (元チーム・リッド)


 セカンダリーメンバーとは違う点は、あくまで補欠であるという点。

 大会全体を通して1度しか試合に出せない代役メンバーであり、通常はメンバーの急病等の場合にのみ、一時的な穴埋めとして入る選手である。


 だが、だからといって重要性が低いわけではない。


 本戦トーナメントの準決勝と決勝のみ自チームの大将が敗北した場合、待ったをかけて泣きの1チャンスとして試合に挑め、勝利すればチームの勝ちになるという限定条件下においてのみ6人目のメインメンバーとなりうるルールが存在する。

 (※ただし、そこまでの間ですでに補欠を使ってしまっている場合は不可)


 なので選手層の厚い国などは、この補欠にも強者を置いておき、大会全体を通しての戦略的な観点での運用ポジションとしている事も多い。

 ……とはいえ、大会はトーナメント式である。本ルールを適用できる準決勝、決勝まで駒を進めなければ補欠に意図して強者を置くことは無意味。


 なので実質、大会中に病欠や出場不能なほどの怪我人が出ない限りは、ほぼ限りなく出番が来ないこのポジションにすることを条件に、シオウはアルタクルエ国際戦技大会へのチームアップ要請に渋々応じた。


 支援団:

   ー ミュースィル=シン=ルクシャード

   ー エステランタ=プルー=ファンデルク(自称支援団長)

   ー ノヴィン=コラットン

   ー ウリン=フェブラー


 支援団はその名の通りチームを支援する者たちだ。

 試合時にはチームベンチに入ることができ、給水飲食の用意や選手の治療行為などを担う。


 なおエステランタは準備が遅れ、ウリンがそれに巻き込まれていまだ二人ともルクシャード皇国を出立できていない。

 

=================================== 



《面白い大会になりそーネ?》

「(面倒なく進んでくれればなんでもいいさ)」

 言いながらシオウは大あくびを一つく。


 しかし守護聖獣はどこか、いつもよりしんみりとした雰囲気を醸し出しながら、シオウの中から雑談に興じているリッドたち、他の面々を眺めていた。


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