05/《PM07:02 本日のオチ・真》





















「…………いえ。いえいえ、いえいえいえいえいえいえいえ。ちょっと、何を良い雰囲気で終わるみたいにやってらっしゃるんですの、ヒロくんがた」


 振り返る。

 そこにはもう一発で分かるようなヨコシマな企てを抱いていらっしゃる、身体にタオルを巻き各々の欲求を満たすそれぞれのアイテムを携えた三人の変態が、開け放した脱衣所のドアと浴室の境に立っていた。


「ああ、済まんね夢生子ちゃん、詩奈ちゃん、飛鳥さん。悪いが先約だ。弟の背中なら、私一人で流してやれるよ」

「な、何を落ち着いて言ってやがんだ! です!」


 ……?

 しいなこそ、何を慌てているんだろうか。

 はて、さっぱりわからない。


「ど、どうしてそんな平静な態度でいらっしゃるんですの! だ、だ、だ、だだ、だって!」


「わぁぁぁぁあああ! 知らなかった、ヒロのお兄さんって、女のひとだったんだー!」


 どもる二人に変わり。

 ムーが、二人が何を驚いているのかの代弁をしてくれた。


 ……はあ、成程。

 なんだ、しーなとアスカさんは、そんなことを言っていたのか。


「ああ、うん? 兄貴兄貴っつってるし普段は男装してるけど、兄貴は普通に女だぞ? で、それがどうかしたか?」

「ど、どうかしたかじゃありませんわよ! い、一体全体どうしてそんなことに!?」


 うーん、それもまた兄貴の優しさ、責任感の成せる技、というか。

 兄貴が『男子として振る舞わなければ真に弟の規範として生き様を見せることなど出来ん! なので弟よ、私のことは姉ではなく兄として扱うように』って意気込んでるから、としか。


 しかしそうか、思えば子供の頃から女子の格好とかしてないし、体型もスレンダーだし。名前も中性的だからムーさえも気づいてなかったのか。意外だ。

 そこまで兄貴として完璧だったことに感心するべきか。


 こうしてると――風呂場くらいだと、確かに兄貴は、姉貴なんだよなあ。

 水に濡れるとよくわかる。肌とか、髪とか、やっぱり男とは違って、スベスベだし。背中洗い返してる時とかは、柔らかいなあ、って思うし。

 普段結んでる髪が下りてると、なんというか、弟に似ず女性としても美人だなあって、見惚れそうになる。


「ねぇねぇ。ヒロとお兄さん……あれ、お姉さんかな? まあいいや、とにかく二人は、よくこうやって一緒にお風呂に入ったりしてるの?」

「日課だけど」

「疲れを流す風呂場にて一日を労うのは兄として当然だ」

「ふ、二人とも恥ずかしかったりしねーのかよ。です」

「えー? 実の兄貴相手に思えるか、そんなこと?」

「まあ、それでも弟が中学に入った頃には水着着用を互いに義務づけたがな」

「御二方。そういう関係に対して、思うところは?」

「何一つ恥じることのない、俺の誇りの兄だ」

「世界に向けて宣言できる、我が愛しの弟だ」


 笹岡夢生子は。

 敷島詩奈は。

 海嶺・エリザベート・飛鳥は。

 

 俺の怪獣幼馴染、年下の師匠、二面性な先輩――ちょいと変わった趣味を持つ三人は、シンクロするように。

 自分のことを棚に上げて、キッパリと言い放った。


「変態だね!」

「変態だろ。です」

「変態ですわっ!」


 ふむ。

 実に遺憾で、心外である。 



<とある健全男子を襲う三つの変態的誘惑事例>

<健全達成>

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とある健全男子を襲う三つの変態的誘惑事例 殻半ひよこ @Racca

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