最終話 もうイヤ~っ!

あれから三年の月日が経過した。


オレは本来行くはずの公立高校ではなく、私立の共学校へ進学した。


ポメ夫はあれ以来姿を消した。

多分天界へ帰ったのだろう。


そして茶坊主の宇棚は卒業と同時に天界へと戻った。


中学の時の仲間は別々の道を歩んだ。

龍也はオレに宣言した通り、自衛隊へ入隊した。


泰彦と謙司は同じ公立の高校へ、優希はソフトボールの推薦で名門校へ入学、そしてデザイアーはオレと同じ高校へ入学した。


オレはポメ夫を追い出した後、学力がアップした。

アップというか、元々は41才のサラリーマンだ、勉強していくうちに、ああ、そう言えばこんな問題があったなぁ、と思いだし、中3に進学した頃はデザイアーと同じ学力まで急成長した。


オレは志望校をデザイアーと同じ学校に決め、担任の佐伯も今の学力ならば大丈夫、と太鼓判を押してくれた。


で、受験も難なくクリアし、それなりに高校生活をエンジョイしている。


もう、元の世界には戻れないのだろうか…


それから更に三年の月日が経過した。


オレは今、大学二年生でそこそこのキャンパスライフを過ごしている。


この先どうなるのか分からない。


だが、もう元の世界に戻ろうだなんて事は考えてない。


これが現実なんだ、この現実を受け止めようと思うようになった。



人生をやり直し出来たんだから、あの連中には感謝しないと。



オレは妻の真奈美や娘の阿莉紗とはもう二度と会う事は無いだろう。


だが、オレはそれでもいい。


やり直し出来たんだから…








「グゥ~っ!ガウガウ!」


ん?何だ?


オレの耳元で犬が吠えている。


その声でオレは目を覚ました。


「パパ!いつまで寝てるの!いくら休みだからって、もうお昼になるよ!」


え?


ふと身体を起こしてみた。


ベッドの脇には阿莉紗が立っていた。


あれ?何これ?

確かまだ大学生のはずだったんだが…


…まさか今までみたのは夢?


吠えている犬はシバオだった。


元の世界に戻ったんだ!


いや、夢を見ていたのだろう。


それにしても、長い夢だった。


中2に戻り、大学生までの数年間を夢で過ごしていたのだから。


うーん、とオレは伸びをしてベッドから起きて、着替えた。


不思議な光景だったなぁ…


でもやっぱりこの世界が一番いいや。


「グルル~っ!」


ったくうるせー犬だな、コイツは。


そうだ、たまには散歩に連れていくか。


昼食を済ませ、オレはシバオを散歩に連れ出した。


【やっぱり元の世界が一番だポメ】


ん?この声は?


ふとシバオを見た。


シバオはこちらを振り向き、一瞬ニヤッとした表情を見せた。


えぇ~っ!まさか今までの出来事はシバオが?


【元の世界に戻っても徳を積むんだポメ】



もうイヤ~っ!



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41才の中学2年生 sky-high @K-Jog

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