40
まさかここまで長丁場になる話とは当初考えておらず、回収するのが随分遅れてしまったネタであるなどと供述しており……。
「……前から思ってたけれど、君の説明分かり辛いよ」
「あ?」
作戦会議の事である。ブラックドッグは僕の足元の影から、それは不満そうな声を発した。
僕より力を持つ本人として、黒犬に説明して貰った方がいいだろうかと、赤嶺さんと豊住さんに、彼が持つ死神の力について話して貰っていたのだが、その相殺能力の辺りで赤嶺さんが
「どこがだよ。ちゃんと伝わってんじゃねえか」
「僕が質問を重ねたり、解釈し直したりしたらね。君の言葉そのままじゃ、よく分からない事結構あるよ」
「例えば」
「死の力をあたかも、回復力に見えるような使い方とか。僕の身に受けた傷をマイナスとすると、そこに君の死神の力が働いて、その傷を殺そうとマイナスの力が働くって」
「そうだよ。だから、お前を癒すんじゃなくて、お前の傷を殺すんだよ。マイナスにマイナスをぶつけてな」
「マイナス同士の足し算って結果もマイナスだから、その言い方じゃあ僕が怪我をした上に死神の力をぶつけられて、余計深刻な事態になってるようにも取られるんだけれど」
「あ?」
「いや『あ』じゃなくて」
「マイナス同士の足し算ってプラスになるんだろうが」
「マイナス同士の引き算だとプラスになるの。まあ相殺したとも言ってたから、傷というマイナスを、死神の力というマイナスで僕の身体から
「何今更去年の話持ち出してんだてめえ」
「いやだって、あの時って一番険悪な頃だったし色々あって疲れてたしで、いちいち君の馬鹿に付き合うのもめんどくさいなって」
「そのお陰で俺は今まで一年間も、恥を晒し続けて来たっていう事か」
「これだけほっといて今更言うのもめんどくさいし」
「てめえ!!」
「それでその死神の相殺能力とは、どれ程信用していいものなの? 何でもは流石に無理でしょう? 確かに神の力とは言え、あくまであなたはそれを分け与えられただけの、死神の子供なんだから。親のようには自由度も高くないでしょうし」
犬共の不毛な会話にはこれ以上付き合いたくないと言いたげに、豊住さんが鬱陶しげに口を挟む。
黒犬はぶすっとしたままだが、まあ答えた。
「……確かに、万能ではねえな。神であろうと得手不得手がある。鬼討の使う刀……。
「そう。まあ火って、どこに言っても共通のイメージがあるからね。災いと神聖さを持ち合わせるという性質は、別に日本に限ったものでもないし。犬と猫って海外の言葉だって日本でも、そういう言葉は無いだけで、猫が
「え。今朝屋上で言ってたあれ? あれはその場凌ぎの嘘なんじゃ」
「いやあれはマジな話。コンビ時代、一緒にペットショップ覗いた時に言ってたもん。『あんな小汚かった家畜も、今は随分偉くなったものだよな』って。『猫と同列に扱われてるなんて』とか何か、結構不愉快そうな顔で言ってた」
「嘘」
「いやホントに。『
「…………」
何か凄いへこむ……。
「…………」
黒犬も結構ショックだったのか、僕と同じように黙りこくっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます