アパート群へと向かって

第5話 アパート群への草叢へと向かって

「これ、何ていう草なのかしら? とても硬くて、触ると、とても痛いわ」

「なんだろうね。見たことも、聞いたこともない」

「ちょ、ちょっと!」

「ど、どうしたの?」

「糸! 糸が!」

「糸?」

「こんな、真冬なのに、蜘蛛の糸が! ほら!あちこちに!」

見ると、よく見ると、真冬にもかかわらず、草のあちらこちらに、白く、銀色の蜘蛛の糸のようなものが、見える。

「本当だ・・・、どうして、こんな季節に」

「嫌!! 嫌よ!! 私、蜘蛛だけは、嫌なの・・・」

「大丈夫だよ、蜘蛛は、いない・・・」

「違うのよ、蜘蛛なんか、どうでもいいの。蜘蛛の糸だけは、だめなの!」

どうやら、彼女には、何か、トラウマのようなものがあるようだ。

「わかった。じゃあ、君はここでじっとしているといい。草や糸は、僕が薙ぎ払う」

僕は、手にしていた鎌のような武器を手に、草を、ばさばさと、切り始めた。

「君は、僕の後ろからついてくればいい」

「ふふ・・・。草薙の剣、というわけね」

「まあ、そういうことになるの、かな・・・」

僕たちは、草薙の剣で草を切り倒して、どうやらアパート群のひとつの棟にたどり着いた。

「ここが、入り口ね」

「そうだね・・・」

そこは、かつて多くの人が行き交っていたのだろう、倉庫らしき部屋や、住居らしき部屋が並んでいる。







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僕と忘れられた廃墟と暗黒少女 赤キトーカ @akaitohma

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