第4話 忘れられた鉱山跡地にて
僕は鉱山跡地に向かい、ハンドルを切る。
「わあ……!」
彼女が、声を上げるのは、とても珍しいことだ。よほど、感激しているのだろう。
「あれがアパート群ね!」
道路から遠くに、かつてアパートだった建物が、たくさん見える。
初めて見る者にとっては、非現実的な、夢のような光景だろう。
今にもぼろぼろに、崩れ落ちそうなアパートがたくさん、並んでいる。本当は、立ち入るのも困難なくらい、木や、草や、ツタがおおい茂っているのだ。だから、スムーズに入れるかどうかは、わからない。
「でも、入られるかどうかは、わからないよ。君のこともあるし、いいルートを見つけられればいいけれど……」
「そんな、ら抜き言葉なんか、気を使うことはないわよ。行くといったら、行くのよ。ここまで来たんだもの……」
僕は目立たない場所に車を停めて、彼女を降ろし、車を降りた。
「素敵……」
ぼくも全く同感だった。
アパート群にたどり着くまでには、名もわからない、びっしりと生い茂ったツタが行く手を阻む。
「ここを突っ切るしかないのかしら?」
「とりあえずね……。いいショートカットはなさそうだ」
僕はその時、道路に止まっていた一台の白い車が目について、気になった。
「とりあえず、行こうか」
「どうしよう?一緒に手を繋げればいいのだけど……」
僕は少し照れた。
「それは、難しいよね……」
そうね、ごめんね、と彼女はいう。
「先導してくれるかしら?」
「うん……、まかせて」
「任せるわ」
僕たちは、茂みに向かい、歩き出した。
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