第10話 待っているモノ。

 どうやって死んだか覚えてないのに、どうして死んだかは覚えてる。

 終わらせたかったからだ。よもや生まれ変わろうだなんて想像だにしなかった。だってもう生きることが辛かったから。疲れきっていたから。そこから頑張ろうなんて思えなかったから。

 だから目を閉じて、また目を開くなんて思ってなかった。

 眠るたびに起きなければいいと思ってた。でも、起こされた。寝ていたかった。ずっと。

 でも目覚めてしまった。生まれてしまった。

 だから好きなように生きようと思った。


 このわけわかんない世界に生まれて、良かったこと。

 人間がいない世界だった。人型に近いのはいたけど。

 猫になれた。厳密には猫に似たナニカだけど。


 わかったこと。ひとりで生きることは不可能ってこと。

 自力でご飯狩れるけど、生活は困らないけど。ひとりで笑いは生まれないんだよ。

 妖精仲間ができてわかったの。一緒に狩りすると大物が獲れた。一緒に食べるともっと美味しい。一人だと安らかでいられるけれど。誰かといると笑顔になるの。


 水の人魚妖精以外に火蜥蜴とか土ミミズとか風馬とか、妖精たくさんいたんだ。

 あの壁のずっと先まで進んだら端っこで待っていたんだって。ずっとずっと待っていたんだって。

 私を。

 猫妖精のわたしを。


 急いでも焦っても意味はなかった。でも諦めなかった。必死ではなかった。ただそうしたかったから進んだ。生きてた。

 猫妖精の私は生きてた。


 魔力で飛んで、足で歩いて跳ねて、羽を動かして飛んで。

 ひたすら壁に沿って移動してた。他に見えるのは虫か木や草。時々謎生物とか。水溜まりもあった。

 あとずっと荒れ地。壁。所々崩れてる。でも長い。

 それをずっと辿ってきた。単調な道も飽きる。でもおやつうまうま。

 テレビもラジオもなんもねえ。でも空はあった。時々眺める。ぼおっと眺める。空は変わる。いつも同じ。同じように変わっていく。青、赤、暗い紺色。たまに金色だったり白だったり虹だったり。

 そう、虹、立った。雨降ったんだよ。ちょっとだけね。それで水溜まりできた。

 きらきらきれいだった。


 飛んで、進んで、食べて寝て。排泄機能は無かった。食べてるのに。全部エネルギーになってた。エコ。

 生産性って何って感じだけど、虫も実も無くならなかった。何でって思ったけど不思議力の世界だし。無くならないし。ご都合主義いえー。

 後で聞いたらここは箱庭だからって。傷ついた魂を癒す箱庭だからって。輪廻を望まない魂を休ませる場所なんだって。休んで英気を養って、もしかしたらよみがえる。もしかしたら本当の終わりを迎える。どちらでもいいんだ。自分で選ぶことができる。

 だからいつかは私も選んでどこかへ進むのかも知れない。

 ただここは休んでいいところだから。自由。もしくは放置プレイ。


 壁の終着点についたら傷ついた魂、妖精仲間と協力して狩りをした。食べる妖精も食べない妖精もいたけど。みんな基本主食は果物だから。果物は針葉樹にひとつ。でも無くなることはない。

 だから狩りは無理にしないんだ。でもやりたいからやる。

 数が増えたので大物狙い。ジャイアントキリングやったった。

 ワニは大変美味しゅうござった。

 鶏味だよ念願の。宿願の。

 みんなで分けて食べたらみんな美味しいねって。笑ってくれて私も嬉しくなって笑った。ワニ美味しかった。お腹あったかくなった。

 これを幸せって、言うのかな?それとも…?




 でもさあ。


 とうとう普通の鳥はいなかったよ。


 残念!

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転生しても幸せなんて見つからない。 翔馬 @nyumnyum

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