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ゆきうさぎ
第1話 誕生日
今日は8月14日、お盆。毎年恒例の家族での食事はいつものように楽しく行われていた。ただ一人私を除いて。
「お母さん、今年もあそこなの…。」
「そうよ。美咲もわかってるでしょう?」
わかってるわよといわんばかりの顔つきでこちらをちらりと見る母。
「そりゃそうだけど…。」
(もっとおいしいところ食べに行きたい)
「自分の誕生日ケーキ食べれるだけでも、幸せなことよ?わがまま言わないの。」
「お姉ちゃんはいいよね、いつも私よりたくさんの人に祝ってもらえるし、お金も…」
私はあわてて妹の話を遮った。
「日和、お金の話はしないの。」
「はーい。」
妹はつまらなそうに歩き出す。
私の家族は4人家族で、父、母、私(美咲)、妹(日和)の極々一般的な家族構成だ。今日はお盆に加え、私の誕生日ということもあっていとこも来て祝ってくれている。はたからしてみれば、すごく幸せそうに見えるのだろう。いいわねぇ。家族でご飯だなんて。なんて声もちらほら聞こえてくるくらいだ。私は普通の家庭の中で普通の女の子として育ってきた。だからか、アブノーマルなことに惹かれることが多い。明日は、母に内緒で好きな人の家に遊びに行くことになっている。もちろん一泊するつもりである。誕生日にはあえなくても、近い日に好きな人と過ごせるなんてこんなに幸せなことはない。今日という一日を乗り切ってしまえば明日は楽しい日がやってくる。早く明日にならないかな。そんなふわふわした気持ちで自分の誕生日を過ごした。
次の日の夕方。父は駅まで送ってくれた。
「いつもありがとうね、お父さん。」
「いいよ。行ってらっしゃい。」
私は父が大好きなのである。ファザコンといっても過言ではない。尊敬できて、私の考えを尊重してくれる父は、私の大切な人なのだ。
「今日は泊まってくるから明日の10時ごろお迎えお願いします。」
私はそう言って彼のもとへ向かった。
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