冬を越え、また冬へ
憂杞
冬を越え、また冬へ
白海に沈む緑を、我は見下ろす。
手足を持つ獣達は、洞に隠れて眠っている。其を持たぬ我々は、乾く身を地上に晒していた。
土を塗り尽くす雪の牢。その真下に、姿も見えぬ同胞達は息衝く。
降りそそぐ白の重みを、我は知る。其は乾き身を濡らす。凍えを齎す棘となる。差し伸べられるものは、無い。伸びきり固められた枝は、ただ風に揺れるのみ。
がさり、がさりと、荷が落ちる。
白海の牢は湛えられる。僅かな光と温もりを、巨なる我が身で遮られたままに。
時は経ち、枝に緑の葉が宿る。
雪は疾うに、同胞達を牢から解放していた。光を浴び、熱を纏い、乾き身を潤す恩寵に転じたのだ。
刻まれた筈の凍瘡は、既に影も形もない。否、今在るのは誠にかの同胞達だろうか。地中に潜んでいた子孫だろうか。もはや識別も儘ならぬ愚鈍さが嘆かわしい。
だが、今に始まった
我々が所有する時は、永遠のものか?
繰り返す過酷の先に、終焉はあるか?
手足を持たぬならば、知る術は無い。故に、我々は生き抜かなければならない。
冬と共に使命を定められし、未来の同胞達へ。
風薫り、我想う。
冬を越え、また冬へ 憂杞 @MgAiYK
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