やなぎなぎ『ナッテ』の個人的レビュー。

一曲目のsnowglobe、スティーヴ・ライヒ的なミニマルミュージック的なアプローチが氷の世界を提言しており、この先続く凍てついた世界を露わにしている。エメラルドの氷が王道を表明し、このアルバムの一曲目により脇道をそれながらも王道という軌道に乗った感じがある。


二曲目の時間は窓の向こう側、チクタクと進む時計の針の秒針を聞き入っていると重力酔いのようなものを全身に受ける。ベースラインがグルーヴィーかつオシャンティー、カクテルと一緒に如何?といったBar的な要素も受け取れる。


三曲目のover and over、空気感がやはり冷たくやなぎなぎのボーカルのビブラートの若干の痺れも冬の外気に溶け入るような白く濁った呼吸が冷たさを伝えてくる。ライトノベルのクライマックスにおける恋愛の成就のようなこれからも続いていく物語的展開に思わずため息が出る。


四曲目のhere and there、この曲は前作のFollow my tracksと似たような旅の曲に思えるが今回はナッテというアルバム上、こちらに問いかけるようなトラックになっている。シャル・ウィー・ダンス?と言ったところだ。思わず握りこぶしを作ってソファから立ち上がりジャンプしたくなる♫


五曲目のスーパーヒーロー、アイスランドのエレクトロニカ、ムームのような曲になっている。とても柔らかな曲で優しく可愛い曲である。この聞き心地に浸っているとお天気雨の中ピタピタと雨滴が素肌に触れるように童心に還るようである。


六曲目のあなたはサキュレント、音質がとても良い、僕の好きなサウンドだ。サイコー。ダンサブルなトラックで散歩中にipodに入れて聞いてみたい(ipodはちょっと古い?)。歩くようなサウンドで暗い気持ちも晴れるようだ。こういう曲、好きにゃんだ~♫


七曲目の海を込めて、この曲は神曲ですね、分かります。いよいよアルバムはクライマックスに!?やなぎなぎのアクアテラリウムの進化系に思える。あちらは水槽でこちらはなんだろうか?恐らく海であろう(確信)。電子音なのに生楽器を使ったような響きがとても気持ち良い。いやーんこの曲好き♫やなぎなぎのボーカルが女神的である。


八曲目の瞑目の彼方、どんどん盛り上がってきますね!冬の外気というのは特に季節における新鮮さを十全に伝えてくるがこれほど音楽に込められた冬の外気というものは今まで感じたことはなかった。観たこと無い景色が音楽によって体感させられる。ああ、僕は今トリップしてるんやなって。観ている心象風景は船の上で流氷が流れているのを観ていることである。


九曲目の砂糖玉の月、ヘッドホンで聞いているが音量を上げたくなる。悲しく胸が塞ぎ込んでいく曲である。しかしながら涙よりも圧迫感が強く、曲が進む毎にギュッギュっと盛り上がりながら心を抱きしめるように絞めてくる。中々気持ち良い。後半、月の持つ狂気が黄色に輝き月のベッドに堕ちる。砂糖玉をホットコーヒーに溶かしたい。


十曲目のrelaxin' soup、これも音質良いなあ!やなぎなぎの柔らかな水彩の井戸の奥底のようなメロディがヒップホップと混ざって、チャーミングで恋するような曲になっている。なんとなく涙が出そうになる。こんな優しい曲あかんねん・・・。


十一曲目の目覚めの岸辺、やっぱり今回のアルバムはやなぎなぎの原点回帰的なアルバムなんかな、と思う。ちょうどファイナルファンタジーがナインでクリスタルに回帰したように。曲としては今まで放っていた手紙(作品)を心を開いてそれからの答えを求めるような曲に思える。


十ニ曲目の夜明けの光をあつめながら、心の窓を開く曲といのは体感したことがあるが、心が外に出る曲というのは体感したことがなかった、この曲はそういう曲。ここがクライマックス。名残惜しい。あと一曲でこのアルバムは終わる。


十三曲目のnatte、魂の在り処というものを連想する。日本では物に魂が宿るというがこの曲にも魂があって揺れ動いているように感じる。それらの宝の山に僕は直面した。


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