第29話 心配や不安はつきもの。

 小泉は僕と目を合わせてきた。

「そういえば、委員長さんは休みが続いていますね」

「そう、だね」

「心配です」

「それはそうだね」

「片垣くんは心配してなさそうです」

「どうして、そう思うの?」

「何となくです」

「何となくって……」

「また、片垣くんの家にいるかもしれないです」

 小泉の言葉に、僕は本当にあるかもしれない不安から、勢いよくかぶりを振った。

「それはないって信じたい」

「会いたくないんですね」

「会いたくないというか、会ったら、どう話せばいいか……。というより、下手したら、殺されるんじゃないかと思って……」

「病院で一度委員長さんに会っているんですよね?」

「まあ、うん……」

 僕は返事をしつつ、入院中に顔を合わせた神前のことを思い出した。今野宮を諦めないという感情の強さを見せつけたが、彼女は実際、亡くなってしまった。だから、神前にとっては、相当辛いことに違いない。だから、クラス委員長として初めてだろう、学校を休み続けるというのは。

「とりあえず、神前さんに会ったら、色々と聞いてみるよ」

「気を付けてください」

 気づけば、小泉が僕の片手を両手でぎゅっと握りしめていた。

「もしかして、心配してくれてる?」

「当たり前です。あたしは冷たい女の子ではないです」

 小泉は機嫌を悪くしたのか、目を逸らしてしまう。

 僕は頭を下げつつ、家に神前がいても、驚かずにちゃんと話をしようと心に決めた。

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