第19話 漠然とした不安

「そう言う片垣くんは、神前さんのことが本当に好きなんですか?」

「好きだよ。じゃなきゃ、今野宮さんのこと、フったりしないよ」

「フったんですか?」

「まあ、その、うん」

「なるほど。そうしましたら、本当に神前さんのことが好きなんですね」

 小泉は納得したかのような表情を浮かべると、片手を差し出してきた。

「握手?」

「そうです。あたしたちは今夜、一緒に今野宮さんを始末するんです」

「それで、握手か……」

「変ですか?」

「いや、変じゃないけど、今更握手するっていうのはどうかなって思っただけで」

「そうですか。なら、やめます」

 小泉はあっさりと手を引っ込めてしまった。

「今野宮さんへの連絡はお願いします」

「うん。わかった」

「それでは」

「教室に戻るの?」

「はい」

 小泉は答えると、非常階段を降りていき、場から去っていった。

 ひとり取り残された僕は近くの手すりに寄りかかる。

「今夜か……。今更思うけど、大丈夫かな……」

 僕は漠然とした不安を抱きつつ、雲がいくつか浮かぶ空を眺めた。

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